2015年2月 1日更新

後続基数の定義

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λ を基数とするとき, λ の「次の大きさの基数」を後続基数(successor cardinal)という.選択公理があれば基数全体のクラス Card は整列されているから, λ の後続基数 λ+ は単に λ+ := min{μ∈Card |μ > λ } と定義すればよい.しかし選択公理がない場合,後続基数をどのように定義すればよいかは自明ではなく,その定義として次の三つが考えられている.

定義 λ, μ を基数とし, λ < μ とする.

  1. μ が λ の 1-successor ⇔ λ < κ≦μ ならば κ=μ .
  2. μ が λ の 2-successor ⇔ λ < κ ならば μ≦κ .
  3. μ が λ の 3-successor ⇔ κ < μ ならば κ≦λ .

この三つの定義の違いは選択公理と関係があり,次の三つを証明することが目的である.

命題1 μがλの 2-successorならば,μはλの 1-successorである.

証明 λ < κ≦μ とすると 2-successorの定義より μ≦κ だから κ=μ である.

命題2 μがλの 3-successorならば, μはλの 1-successorである.

証明 λ<κ≦μ とする. κ<μ と仮定すると 3-successorの定義よりκ≦λとなりλ<κに矛盾する.故にκ=μである.

命題3 2-successorはもし存在すれば一意である.

証明 μ, νをλの 2-successorとする.λ<μだから,νがλの 2-successorであることよりν≦μとなる.同様にして λ < ν より μ≦ν が分かる.よって μ=ν である.

補題4 基数 λ, μ, κ が λ+μ=λ+κ を満たすとき,ある基数 ξ, ζ, η が存在して λ=λ+ξ=λ+ζ,μ=ξ+η,κ=ζ+η を満たす.

証明 互いに素な集合 X, Y, Z を |X|=λ,|Y|=μ,|Z|=κとなるように取る.すると |X|+|Y| = |X|+|Z| だから全単射 f: X∪Y→X∪Z が存在する.

Y0 := { y∈Y | 任意の n>0 に対して fn(y)∈X }
Y1 := Y\Y0
X0 := ∪n > 0fn(Y0)
X1 := X\X0

とする.このとき f|X0∪Y0: X0∪Y0→X0 は全単射である.よって ξ:=|Y0| と置けば

λ+ξ = |X|+|Y0| = |X1|+|X0|+|Y0| = |X1|+|X0| = |X| = λ

である. η := |Y1| とすれば μ= |Y| = |Y0|+|Y1| =ξ+η である.

g:=f-1 に対しても同様のことをする.即ち

Z0 := { z∈Z | 任意の n>0 に対して fn(z)∈X }
Z1 := Z\Z0

としてζ:= |Z0|,η' := |Z1| とすれば λ+ζ=λ,κ=ζ+η'となる.後はη=η'を示せばよい.

y∈Y1 とすると,定義からある ny > 0 が一意に存在して f1(y), …, fny-1(y)∈X , fny(y)∈Z が成り立つ.このとき gny(fny(y))∈Y だから fny(y)∈Z1 である.よって写像 Y1→Z1 が Y1∋y |→ fny(y)∈Z1 により定義される.これは明らかに全単射である.よって η= |Y1| = |Z1| =η' である.

補題5 基数 λ, ν, κ が λ≦ν≦λ+κ を満たすとき,ある基数 ζ≦κ が存在して ν=λ+ζ となる.

証明 λ≦ν , ν≦λ+κ だから,ある基数 μ0, μ1 により λ+μ0=ν , ν+μ1=λ+κ と書ける.このとき λ+(μ01)=λ+κ だから,補題4によりある基数ξ, ζ, ηが存在して λ=λ+ξ=λ+ζ,μ01=ξ+η,κ=ζ+ηを満たす.するとμ0≦ξ+ηだから,基数ξ'≦ξとη'≦ηを μ0=ξ'+η' となるように取れる.このときλ≦λ+ξ'≦λ+ξ=λだからλ=λ+ξである.このときν=λ+μ0=λ+ξ'+η'=λ+η'となり,またη'≦η≦κである.

命題6 任意の基数 λ の 1-successorは存在する.

証明 λがλ<λ+1 を満たすならば,明らかに λ+1 が 1-successorである.そうでないとき,即ちλがλ=λ+1 を満たすとき,λ+λ*が 1-successorであることを示す.(λ* は λ のHartogs数.)

λ<μ≦λ+λ* とする.補題5によりある ζ≦λ* が存在して μ=λ+ζ となる.

ζ<λ* と仮定する.Hartogs数の定義からζ≦λである.よってあるκによりλ=ζ+κと書ける.

(i) ζが無限基数のとき. ζ<λ* だからζはアレフである.よって

μ=λ+ζ=ζ+κ+ζ=ζ+κ=λ

となり,λ<μに矛盾する.

(ii) ζが有限基数のとき.今λ=λ+1 だったからλ=λ+アレフ0=ζ+κ+アレフ0=アレフ0+κ となる.故に(i)と同様にして矛盾する.

よってζ=λ*である.故にμ=λ+λ*となるからλ+λ*が 1-successorである.

定理 選択公理 ⇔ 任意の基数λの 2-successorは存在する.

証明 ( ⇒ )明らか.

( ⇐ )選択公理と同値な条件「任意の無限基数 λ に対して λ+λ** 」を示す.

証明等については濃度の性質を参照

λを任意の無限基数として,λ*<λ+λ*と仮定する.λ*の 2-successorをμとすると,λ***だからμ≦λ**である.よってμはアレフでμ\not\leqλ*だからλ**≦μとなる.故にμ=λ**が分かる.今λ*<λ+λ*だったからλ**≦λ+λ*である.故にλ***≦(λ+λ*)*** となり矛盾する.

補題7 ある自然数 k > 0 に対して kλ+μ=(k+1)λ+κ となるとき λ+μ=2λ+κ である.

証明 k に関する帰納法. k=1 のときは明らか. k > 1 とする.このとき kλ+μ=(k+1)λ+κ より λ+((k-1)λ+μ)=λ+(kλ+κ) である.よって補題4により,ある基数ξ, ζ, ηが存在してλ=λ+ξ=λ+ζ,(k-1)λ+μ=ξ+η,kλ+κ=ζ+ηを満たす.故に

(k-1)λ+μ
= (k-2)λ+λ+μ
= (k-2)λ+λ+ζ+μ
= (k-1)λ+ζ+μ
= ξ+η+ζ
= kλ+κ+ξ
= kλ+κ

となるから帰納法の仮定によりλ+μ=2λ+κである.

補題8 基数λがλ< 2λを満たすとする.μは基数で,λ+μがλの 1-successorであるとする.このときλ+μ< 2λ+μ.

証明 λ+μ=2λ+μと仮定する.このときλ< 2λ≦3λ≦3λ+μ=2λ+μ=λ+μである.λ+μはλの 1-successorだったから 2λ=3λとなる.故に補題7から λ=2λ となり矛盾する.

命題9 基数λがλ< 2λを満たすとする.また基数μはμ\not\leqλでλ+μがλの 1-successorであるとする.このときλ+μの 3-successorは存在しない.

証明 λ+μの 3-successor νが存在すると仮定する.λ≦λ+μ<νである.よってある基数κによりλ+κ=νと書ける.κ<νである.

κ=νと仮定するとλ+κ=κである.λ< 2λで,λ+μがλの 1-successorだから補題8によりλ+μ< 2λ+μとなる.よって補題7により2λ+μ< 3λ+μである.従って

λ+μ < 2λ+μ < 3λ+μ≦2λ+ν=3λ+κ=λ+κ=ν

となる.νがλ+μの 3-successor,故に 1-successorだからこれは矛盾する.

故に 3-successorの定義からκ≦λ+μとなる.よってλ+μ<ν=λ+κ≦2λ+μである.補題5により,あるζ≦λを使ってν=λ+μ+ζと書ける.このときλ≦λ+ζ≦λ+μとなる.

λ+ζ<λ+μ+ζ=νが示せれば, 3-successorの定義からλ+ζ≦λ+μとなる.よってλ+ζ<λ+μ+ζを示せばよい.

λ+ζ=λ+μ+ζと仮定する.ζ≦λだからζ+ζ'=λと書ける.このとき

λ+λ=λ+ζ+ζ'=λ+μ+ζ+ζ'=λ+(λ+μ)

である.故に補題4によりある基数ξ, ρ, ηが存在してλ=λ+ξ=λ+ρ,λ=ξ+η,λ+μ=ρ+ηを満たす.このとき

λ=λ+ρ=ξ+η+ρ=ξ+λ+μ=λ+μ

となりλ+μがλの 1-successorであることに矛盾する.

よってλ+μがλの 1-successorだったからλ=λ+ζまたはλ+ζ≦λ+μである.

(i) λ=λ+ζ のとき.ν=λ+μ+ζ=λ+μとなりνがλ+μの 3-successorであることに矛盾する.

(ii) λ+ζ=λ+μ のとき.補題4によりある基数ξ, ρ, ηが存在してλ=λ+ξ=λ+ρ,ζ=ξ+η,μ=ρ+ηを満たす.このとき

μ=ρ+η≦ξ+ρ+η=ζ+ρ≦λ+ρ=λ

となりμ\not\leqλに矛盾する.

命題10 基数λがλ≧アレフ0 かつλ< 2λを満たすとする.このときλ+λ* の 3-successorは存在しない.

証明 λ≧アレフ0ならばλ+λ*がλの 1-successorである.故に命題9からλ+λ*の 3-successorは存在しない.

任意の基数が 3-successorを持つ ⇒ 任意の無限基数 λ に対して λ+λ=λ .

証明 命題10から,ある無限基数 λ について λ < 2λ となるとき,ある基数 μ≧アレフ0 について μ < 2μ となることを示せばよい.

その為にμ:=λ+アレフ0と置く.アレフ0\not\leqλ としてよい.μ=2μと仮定する.即ちλ+アレフ0=λ+λ+アレフ0である.補題4により,ある基数 ξ, ζ, η が存在してλ=λ+ξ=λ+ζ,アレフ0=ξ+η,λ+アレフ0=ζ+ηを満たす.今 アレフ0\not\leqλ だから, λ=λ+ξ=λ+ζ となる為には ξ=ζ=0 でなければならない.故にλ+アレフ0=η=アレフ0だからλ≦アレフ0となり矛盾する.

ZF では任意の基数が 3-successorを持つことは証明できない.

なお,他にも「任意の基数が一意な 1-successorを持つ」は選択公理を導かないこと,等も知られている.

参考文献

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