2013年07月07日更新

濃度の性質

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以下の命題の証明は順序数・濃度の簡単なまとめを参照.

命題1 任意の濃度 κ, λ について
κ≦λ ⇔ ある濃度 μ が存在して κ+μ= λ

命題2 濃度 κ, λ≧2 に対し κ+λ≦κ・λ .

命題3 アレフ0≦κ ならば 2κ-κ=2κ

命題4 任意のアレフ アレフ に対して アレフ2=アレフ

命題5 任意のアレフ アレフ, アレフ' に対し アレフアレフ'=アレフ+アレフ'=max { アレフ, アレフ' } .

命題6 濃度 κ, λ, μ とアレフ アレフ が κ・アレフ≦λ+μ を満たすとき, κ≦λまたは アレフ≦μ.

命題7 濃度 κ, λ, μ とアレフ アレフ が κ・λ≦アレフ+μ を満たすとき, κ≦アレフ または λ≦μ .

命題8 濃度 κ, λ とアレフ アレフアレフ≦κ・λ を満たすとき, アレフ≦κ または アレフ≦λ である.

命題9 Pfin(X) := { Y⊂X | Y は有限集合 } と置くと,整列可能な無限集合 X に対し |X|=|Pfin(X)| .

命題10 Γ(X):= { α|α は順序数, |α|≦|X| } と置く.この Γ をHartogs関数という.また κ=|X| のとき κ*:=|Γ(X)| と書く.これをHartogs numberという.Hartogs numberはアレフである.

  1. Γ(X) は |α|\not\leq|X| となるような順序数 α のうち最小の順序数である.
  2. κ*アレフ\not\leqκ となるようなアレフ アレフ のうち最小のアレフである.
  3. κ*≦22κ2
  4. κ*≦222κ
  5. 無限濃度 κ に対して κ**=(κ+κ*)*
  6. 無限濃度 κ に対して (κ2)**

定理11 κ, λ, μ, ν は無限濃度, アレフ はアレフを表すとする.次の命題は( ZF 上)同値.

  1. 選択公理
  2. 任意の κ に対しある アレフ が存在して κ≦アレフ
  3. κ≦κ*
  4. κ・κ*=κ+κ*
  5. κ・λ=κ+λ .
  6. κ2=κ .
  7. κ+κ**
  8. κ+λ=κ または κ+λ=λ .
  9. κ・κ**
  10. κ・λ=κ または κ・λ=λ .
  11. 任意の κ に対しある λ が存在して κ=λ2
  12. κ22 ならば κ=λ .
  13. κ < λ かつ μ < ν ならば κ+μ < λ+ν .
  14. κ < λ かつ μ < ν ならば κ・μ < λ・ν .
  15. κ+μ < λ+μ ならば κ < λ .
  16. κ・μ < λ・μ ならば κ < λ .
  17. κ < λ ならば λ-κ が存在する.
  18. κ < λ ならば λ-κ=λ .
  19. κ < λ ならばある μ が存在して λ=κ・μ
  20. κ < λ ならば λ÷κ が存在する.
  21. κ < λ ならば λ÷κ=λ .
  22. κ+μ=κ+ν ならば μ=ν または μ, ν < κ .
  23. κ+κ < κ+λ ならば κ < λ .
  24. μ < κ かつ ν < κ ならば μ+ν≠κ .
  25. μ < κ かつ ν < κ ならば μ・ν≠κ .
  26. μκ < μλ かつ μ≠0 ならば κ < λ .
  27. κ**⇒κ=μ .
  28. κ* < μ < κ+κ* となる μ は存在しない.
  29. κ* < μ*⇒κ < μ .
  30. κ* < アレフ*⇒κ < アレフ
  31. κ < μ⇒κ* < μ*
  32. アレフ < μ⇒アレフ* < μ*
  33. κ* < κ*+κ⇒κ**≦κ*+κ .
  34. κ≦λ+μ ならば κ≦λ または κ≦μ .
  35. κ≦λ+アレフ ならば κ≦λ または κ≦アレフ
  36. κ≦λ・μ ならば κ≦λ または κ≦μ .
  37. κ≦λ・アレフ ならば κ≦λ または κ≦アレフ

証明 (1 ⇒ その他)整列可能定理により,全ての無限濃度はアレフである.よって命題4等から容易に2-37が従う.(26は濃度の比較可能性により対偶が「 κ≧λ ならば μκ≧μλ または μ= 0 」なので成り立つ.)

(2 ⇒ 1)明らか.

(3 ⇒ 2) κ* がアレフであるから明らか.

(4 ⇒ 3) κ・κ*=κ+κ* とすると, κ* はアレフだから命題6より κ≦κ* または κ*≦κ である. κ*\not\leqκ だから κ≦κ* となる.

(5 ⇒ 4)明らか.

(6 ⇒ 5) κ+λ=(κ+λ)22+2・κ・λ+λ2≧κ・λ≧κ+λ .

7 ⇒ 3は明らか.

(8 ⇒ 7) κ+κ*=κ と仮定すると κ*≦κ となり矛盾する.故に仮定8より κ+κ** である.

(9 ⇒ 3)明らか.

(10 ⇒ 9) κ・κ*=κ と仮定すると κ*≦κ となり矛盾する.故に仮定10より κ・κ** である.

(11 ⇒ 7)仮定11より, κ+κ*2 となる λ が存在する. κ*≦κ+κ*2 である.よって命題8より κ*≦λ となる.従って命題1により λ=κ*+μ となる μ が取れる.このとき

κ+κ*2=(κ*+μ)2=(κ*)2+2・κ*・μ+μ2≧κ*・μ.

よって命題6から κ*≦κ または μ≦κ* が分かる. κ*\not\leqκ なので μ≦κ* ,従って λ=κ*+μ≦κ*** ,故に λ=κ* である.よって κ+κ*2=(κ*)2* である.

(12 ⇒ 3) λ:=κアレフ0 と置くと κ≦λ かつ λ22・アレフ0アレフ0=λ である. (λ+λ*)22+2・λ・λ*+(λ*)2≧λ・λ* となるが,一方

(λ+λ*)2
= λ2+2・λ・λ*+(λ*)2
= λ+2・λ・λ**
≦λ・λ*+2・λ・λ* (命題2より)
= λ・(3・λ*)
= λ・λ*

だから, (λ+λ*)2=λ・λ* となる.よって (λ+λ*)2=λ・λ*2・(λ*)2=(λ・λ*)2 が成り立つ.従って仮定12より λ+λ*=λ・λ* である.故に命題6から κ≦λ≦λ* が分かる.

(13 ⇒ 2) λ:=アレフ0・κ と置くと κ≦λ かつ 2・λ=2・アレフ0・κ=アレフ0・κ=λ である. λ < λ+λ* かつ λ* < λ+λ* と仮定すると仮定13より λ+λ* < (λ+λ*)+(λ+λ*)=2・λ+2・λ* =λ+λ* となって矛盾する.故に λ=λ+λ* または λ*=λ+λ* である. λ*\not\leqλ なので λ* =λ+λ* でなければならない.即ち κ≦λ≦λ* である.

(14 ⇒ 2) λ:=κアレフ0 として13 ⇒ 2と同様にすればよい.

(15 ⇒ 7) κ* < κ+κ* と仮定すると κ*** < κ+κ* だから仮定15より κ* < κ となり矛盾する.

(16 ⇒ 9)15 ⇒ 7と同様.

(17 ⇒ 7) κ* < κ+κ* と仮定する.仮定17より κ+κ** +μ となる μ が唯一つ存在する. μ=κ も μ=κ+κ* もこの式を満たすから,一意性より κ=κ+κ* .従って κ*≦κ となり矛盾.

(18 ⇒ 17)明らか.

(19 ⇒ 7) κ* < κ+κ* と仮定する.仮定19より κ+κ**・μ となる μ が存在する.従って命題6より κ*≦κ または μ≦κ* である. κ*\not\leqκ だったから μ≦κ* である.よって命題5より κ+κ**・μ=κ* となり矛盾する.故に κ*=κ+κ* である.

20 ⇒ 19と21 ⇒ 20は明らか.

(22 ⇒ 3) κ*+κ=κ*+(κ+κ*) だから仮定22より κ=κ+κ* または κ, κ+κ* < κ* である. κ*\not\leqκ だから κ, κ+κ* < κ* となる.従って κ≦κ* である.

(23 ⇒ 7) κ***≦κ*+κ である. κ** < κ*+κ だとすると仮定23から κ* < κ となり矛盾するので κ**+κ である.

(24 ⇒ 18) κ < λ とする.命題1より λ=κ+μ となる μ が存在する.仮定24より λ=μ となる,即ち μ は一意に決まる.よって λ-κ=λ である.

(25 ⇒ 9) κ≦κ・κ*, κ*≦κ・κ* なので,仮定25より κ=κ・κ* または κ*=κ・κ* である. κ*\not\leqκ だったから κ*=κ・κ* となる.

(26 ⇒ 2) μ:=2κアレフ0 と置く. μκ=(2κアレフ0)κ=2κアレフ0+1=2κアレフ0=μ≦μμ* である. μκμ* だとすると μ*≦μμ*κ=μ となり矛盾するから, μκ < μμ* である.故に仮定26より κ < μ* である.

(27 ⇒ 7)命題10の3より κ**=(κ+κ*)* だから仮定27により κ*=κ+κ* となる.

(28 ⇒ 6) (κ2)**≦κ+κ*≦κ2* だから,仮定28により κ*=κ+κ* または κ+κ*2* である.もし κ*=κ+κ* ならば κ≦κ* だから命題4により κ2=κ である.

そこで κ+κ*2* とすると κ≦κ2≦κ+κ* となる.よって再び仮定28により κ=κ2 または κ2=κ+κ* である. κ2=κ+κ* と仮定すると κ*≦κ2 だから命題8より κ*≦κ となり矛盾する.故に κ=κ2 である.

(29 ⇒ 30)明らか.

(30 ⇒ 3) κ* はアレフだから, κ* < κ** より κ < κ* である.

(31 ⇒ 32)明らか.

(32 ⇒ 7) κ* < κ+κ* と仮定する.命題10の3より κ**=(κ+κ*)* だから,仮定32より κ** < (κ+κ*)*** となり矛盾する.従って κ*=κ+κ* である.

(33 ⇒ 3) κ**≦κ*+κ と仮定する. κ** はアレフだから命題4より (κ**)2** となる.故に (κ**)2≦κ*+κ だから命題6より「 κ**≦κ* または κ**≦κ 」となり矛盾する.従って κ**\not\leqκ*+κ であるから,仮定33より κ**+κ となる.従って κ≦κ* である.

(34 ⇒ 35)明らか

(35 ⇒ 3) κ+κ*≦κ+κ* だから仮定35より「 κ+κ*≦κ または κ+κ*≦κ* 」となる. κ+κ*≦κ と仮定すると κ*≦κ となり矛盾するから κ+κ*≦κ* ,従って κ≦κ* である.

(36 ⇒ 37)明らか

(37 ⇒ 3) κ・κ*≦κκ* だから仮定35より「 κ・κ*≦κ または κ・κ*≦κ* 」となる. κ・κ*≦κ と仮定すると κ*≦κ となり矛盾するから κ・κ*≦κ* ,従って κ≦κ* である.

※条件6「 κ2=κ 」は選択公理と同値であるが, 2・κ=κ は選択公理と同値ではない.

※条件12「 κ22 ならば κ=λ 」は選択公理と同値であるが,「 2・κ=2・λ ならば κ=λ 」は ZF で成り立つ.

※条件19「 κ < λ ならばある μ が存在して λ=κ・μ 」は選択公理と同値であるが,「 κ < λ ならばある μ が存在して λ=κ+μ 」は ZF で成り立つ.(命題1)

定理12 選択公理
⇔ 無限濃度 κ, λ に対して以下が成り立つ.

「κ≦λ < 2κ かつある μ が存在して κ=μ2」ならばある ν が存在して λ=ν2.

証明 ( ⇒ )明らか.

( ⇐ )定理11の条件2を示す. κ を無限濃度として λ:=κアレフ0 とおく. λ22・アレフ0アレフ0=λ である.命題10の1より λ*≦22λ2=22λ となるから 2λ≦2λ*≦2λ+22λ=22λ である.

もし 2λ*=22λ であれば, アレフ0≦λ≦2λ だから命題3より λ*=22λ となり κ≦λ≦22λ* である.

そこで 2λ* < 22λ とする.このとき 2λ≦2λ* < 22λ かつ 2λ=(2λ)2 だから,仮定によりある ν が存在して 2λ*2 と書ける.故に命題7により ν≦λ* または ν≦2λ である.もし ν≦λ* であれば

κ≦λ≦2λ≦2λ*2≦(λ*)2*

である.

そこで ν≦2λ とする.このとき λ≦λ+λ*≦2λ*2≦(2λ)2=2λ である.

もし λ+λ*=2λ (=(2λ)2) ならば命題7により 2λ≦λ または 2λ≦λ* だから κ≦λ≦2λ≦λ* となる.

そこで λ+λ* < 2λ とする.このとき λ≦λ+λ* < 2λ かつ λ=λ2 だから仮定によりある μ が存在して λ+λ*2 と書ける.故に命題7により μ≦λ または μ≦λ* である. μ≦λ と仮定すると λ*≦λ+λ*2≦λ2=λ となり矛盾する.故に μ≦λ* であり κ≦λ+λ*2≦λ* となる.

定理13 選択公理
⇔ 無限濃度 κ, λ に対して「 κ≦λ < 2κ ならばある μ が存在して λ=κ・μ 」.

証明 ( ⇒ )明らか.

( ⇐ )定理11の条件2を示す.前定理の証明と同様である. κ を無限濃度として λ:=κアレフ0 とおく. 2λ≦2λ*≦22λ である.

もし 2λ*=22λ であれば κ≦λ≦22λ* であるから, 2λ* < 22λ とする.このとき 2λ≦2λ* < 22λ だから,仮定によりある μ が存在して 2λ*=λ・μ と書ける.故に命題7により λ≦λ* または μ≦2λ である.もし λ≦λ* であれば κ≦λ≦λ* となる.

そこで μ≦2λ とする.このとき λ≦λ+λ*≦2λ*=λ・μ≦(2λ)2=2λ である.

もし λ+λ*=2λ ならば κ≦λ≦2λ≦λ* であるから, λ+λ* < 2λ とする.このとき λ≦λ+λ* < 2λ だから仮定によりある ν が存在して λ+λ*=λ・ν と書ける.故に命題7により ν≦λ または λ≦λ* である. ν≦λ と仮定すると λ*≦λ+λ*=λ・ν≦λ2=λ となり矛盾する.故に λ≦λ* であり κ≦λ≦λ* となる.

定理14 選択公理 ⇔ 無限集合 X に対し |X|=|Pfin(X)| .

証明 ( ⇒ )命題9より明らか.

( ⇐ )定理11の条件6を示す. X を集合とするとき X×X = { <a, b> | a, b∈X } で, <a, b> = { {a}, {a, b} } が順序対の定義だったから X×X⊂Pfin(Pfin(X)) .故に

|X|≦|X×X|≦|Pfin(Pfin(X))|=|Pfin(X)|=|X|.

定義 κ を濃度とする. κ=|X| となる X を取り e(κ):=|Pfin(X)| と定める.

命題18 κ, λ を無限濃度, アレフ をアレフとする.

  1. e(アレフ)=アレフ
  2. e(κ+λ)=e(κ)・e(λ) .
  3. κ・アレフ0=κ ならば e(κ・アレフ)=e(κ)・e(アレフ) .

証明 (1)命題9より明らか.

(2) 互いに素な無限集合 X, Y に対して f: Pfin(X)×Pfin(Y)→Pfin(X∪Y) を f(A, B):=A∪B と定めれば f は全単射である.

(3)2より e(κ・アレフ)=e(κ+アレフ) を示せばよい.命題2より κ+アレフ≦κ・アレフ だから e(κ+アレフ)≦e(κ・アレフ) である.

逆を示す.今仮定より κ・アレフ0=κ だから e(κ・アレフ)≦e(κ・アレフ0+アレフ) を示せばよい. κ=|X|, アレフ=|W|, (N×X)∩W= ∅ として f: Pfin(X×W)→Pfin((N×X)∪W) を以下のように定める. A∈Pfin(X×W) とする. w∈W に対して Aw:= { x∈X|(x, w)∈A } と置けば,ある w1, …, wn∈W が一意に存在して

A=∪i=1n(Awi× { wi } ), w1 < w2 < … < wn

と書ける.このとき f(A):= { w1, …, wn } ∪∪i=1n( { i } ×Awi) と定める.この f は単射である.よって e(κ・アレフ)≦e(κ・アレフ0+アレフ) である.

定理19 κ, λ は無限濃度, アレフ はアレフを表すとする.次の命題は( ZF 上)同値.

  1. 選択公理
  2. e(κ)=κ .
  3. e(κ+λ)=e(κ)+e(λ) .
  4. e(κ+アレフ)=e(κ)+e(アレフ) .
  5. e(κ)=e(λ), κ≦λ⇒κ=λ .
  6. e(κ+λ)=e(κ) または e(κ+λ)=e(λ) .
  7. e(κ+e(κ)*)=e(κ)*

証明 1 ⇔ 2は定理14である.

(1 ⇒ その他)1 ⇔ 2により明らか.

(3 ⇒ 4)明らか.

(4 ⇒ 1)定理11の2を示す. e(κ)* はアレフだから仮定4により e(κ+e(κ)*)=e(κ)+e(e(κ)*)=e(κ)+e(κ)* となる.一方命題18により e(κ+e(κ)*)=e(κ)・e(e(κ)*)=e(κ)・e(κ)* となる.従って e(κ)・e(κ)*≦e(κ)+e(κ)* だから命題6より e(κ)*≦e(κ) または e(κ)≦e(κ)* となる.故にHartogs numberの性質より e(κ)≦e(κ)* となり κ≦e(κ)≦e(κ)* が分かる.

(5 ⇒ 1)定理11の2を示す. λ:=κ・アレフ0 とおく.命題18を使って e(λ+λ*)=e(λ)・e(λ*)=e(λ・λ*) が分かる.命題2より λ+λ*≦λ・λ* だから仮定5より λ+λ*=λ・λ* となる.従って命題6とHartogs numberの性質から κ≦λ≦λ* となる.

(6 ⇒ 7)明らか.

(7 ⇒ 1)定理11の2を示す. κ≦κ+e(κ)*≦e(κ+e(κ)*)=e(κ)*

定理 選択公理
⇔ X を集合,{ Xi }i=0 を集合族として |X| < |∪i=0Xi| を満たすとする.このときある n∈N が存在して |X|≦|∪i=0nXi| .

証明 ( ⇒ )任意の n∈N に対して |X|\not\leq|∪i=0nXi| と仮定する.選択公理により濃度は比較可能であるから |∪i=0nXi| < |X| となる.よって |Xi|≦|X| であり |∪i=0Xi|≦アレフ0・|X|=|X| となって矛盾する.

( ⇐ )整列可能定理を示す.その為 X を任意の集合とする. Y0:=X, Yi+1:=P(Yi), Y:=∪i=0Γ(Yi) と定める. Y は整列可能である.各 i∈N について標準的な単射 Γ(Yi)→P(P(P(Yi)))=Yi+3 が構成できるから |Y|≦|∪i=0( { i } ×Yi)| である.

|Y| < |∪i=0( { i } ×Yi)| と仮定する.ある n∈N が存在して |Y|≦|∪i=0n( { i } ×Yi)| となる.よってある Zi⊂Yi が存在して |Y|=|∪i=0n( { i } ×Zi)| とできる. Y が整列可能だから Zi も整列可能であり |Y|=|∪i=0n( { i } ×Zi)|=∪i=0n|Zi|=max0≦i≦n|Zi| となる. |Zj|=max0≦i≦n|Zi| となる j を取れば |Γ(Yj)|≦|Y|=|Zj|≦|Yj| となり矛盾する.

故に |Y|=|∪i=0( { i } ×Yi)|≧|Y0|=|X| となり, X は整列可能である.

定理 次の命題は( ZF 上)同値.

  1. 選択公理
  2. 任意の集合 X に対してある集合 Y が存在して Y = { x⊂Y | |X|\not\leq|x| } .
  3. 任意の集合 X に対してある集合 Y が存在して |Y| = |{ x⊂Y | |X|\not\leq|x| }| .

証明 (1 ⇒ 2) X を任意の集合とする. α := Γ(Γ(P(X))) とおき, β < α に対して

f(β) := { x⊂∪γ<βf(γ) | |x| < |X| }

と定め, Y := ∪β<αf(β) とする.この Y が Y = { x⊂Y | |X|\not\leq|x| } を満たす.

(⊂) x∈Y とする. Y の定義よりある β < α が存在して x∈f(β) となる.故に x⊂Y かつ |x| < |X| ,即ち |X|\not\leq|x| である.従って x∈{ x⊂Y | |X|\not\leq|x| } .

(⊃) x⊂Y かつ |X|\not\leq|x| とする.選択公理により,濃度が比較可能だから |x|≦|X| である. a∈x に対して Ba := { β < α | a∈f(β) } , γa := minBa と定め, R := { γa | a∈x }とする. R は順序数の集合だから |R|≦|x| となる.故に |R| < 2|R|≦2|x|≦2|X| である. R は順序数の集合だから整列可能であり,よって Γ の性質から |R| < |α| が分かる. θ:=supR と置く.明らかに |θ|≦|∪β∈R( { β } ×β)| である. β∈R とすれば β < α だったから |β| < |α| である. δ:=Γ(P(X)) とすれば α=Γ(δ) だから |β|≦|δ| となる. β∈R に対して Aβ:= { f: β→δ|f は単射 } ≠ ∅ と定める.選択公理により (fβ)∈Πβ∈RAβ が取れる.これにより |∪β∈R( { β } ×β)|≦|∪β∈R({β}×δ)| である.よって

|θ|≦|∪β∈R({β}×β)|≦|∪β∈R({β}×δ)|≦|R×δ|=|δ|

となり |θ| < |α| が成り立つ.

a∈x とするとある β∈R が存在して a∈f(β) である.よって x⊂∪β < θ+1f(β) となる. |θ| < |α| だから θ+1 < α である.よって, |x| < |X| だったから, x∈f(θ+1)⊂Y が分かった.

(2 ⇒ 3)明らか.

(3 ⇒ 1)整列可能定理を示す. X を任意の集合とする.仮定3よりある Y が存在して |Y| = |{ A⊂Y | |X|\not\leq|A| }| となる. S:= { A⊂Y | |X|\not\leq|A| } と置き単射 f: S→Y と ∞ ∉ Y を取る.順序数 α に対して

g(α) := f(g''α) (g''α∈Sのとき)
g(α) := ∞ (そうでないとき).

と定める. g(α)≠∞, g(β)≠∞ で g(α)≠g(β) ならば α≠β である.故に順序数 γ で g(γ)=∞ なるものが存在する.そのような γ のうち最小の γ を取っておけば W := g''γ⊂Y で, W = g''γ ∉ S である.よって |X|≦|W| となり, W は整列可能だから X も整列可能となる.

参考文献

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