2011年9月19日更新

基数の性質

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|X|で集合Xの基数(濃度)を表す.

定義

XとYを集合とする.

  1. |X|≦|Y| ⇔ 単射 X→Y が存在する
  2. |X|=|Y| ⇔ 全単射 X→Y が存在する
  3. |X|<|Y| ⇔ |X|≦|Y|かつ|X|≠|Y|
  4. |X|≦*|Y| ⇔ 全射 Y→X が存在するか,X=∅
  5. |X|<*|Y| ⇔ |X|≦*|Y|かつ|X|≠|Y|

基本的な性質

定義

整列された無限集合Xを使って |X| と表される基数をアレフと言い,アレフで表す.特に,自然数全体がなす整列集合で表されるアレフをアレフ0と書く.

命題

Xを集合とする.¬アレフ≦|X|となるような最小の アレフ が存在する.
(勿論選択公理は仮定しない.このような アレフ をXのHartogs numberと言う.)

証明

α := { β:順序数 | |β|≦|X| } と置く.αは集合である.

W:= { R⊂X×X | RはXのある部分集合を整列する } と定義する.Wは集合である.よって「Wに現れる整列順序と同型な順序数全体」も集合である.この集合はαと一致する.

順序数の推移的な集合は順序数だから,αも順序数である.α∉αだから¬|α|≦|X|.よって,αの定義から アレフ := |α| はHartogs numberである.

定理1

次の命題は(ZF上)同値

  1. 選択公理
  2. 任意のX, Yについて,|X|≦|Y| または |Y|≦|X|
  3. 任意のX, Yについて,|X|≦*|Y| または |Y|≦*|X|

証明

(1 ⇒ 2) XとYを任意の集合とする.選択公理と同値な整列可能定理により,この2つを整列する.すると整列順序の性質から |X|≦|Y| または |Y|≦|X| が分かる.

(2 ⇒ 3) は明らか.

(3 ⇒ 1) まず |Y|≦*|X| ⇒ |Y|≦|P(X)| であることに注意する.

f: X→Yを全射だとすると b∈Y に f^{-1}(b)∈P(X) を対応させる写像は単射である.

整列可能定理を示す.Xを集合とする. アレフ を P(X) のHartogs numberとすると¬アレフ≦|P(X)|.よって先の注意より¬アレフ≦*|X| である.従って仮定3. から |X|≦*アレフ となる.アレフ = |α| となる順序数αと全射 f: α→X を取る.すると g(a) := min f^{-1}(a) として単射 g: X→α が得られる.よってXは整列可能である.

定義

κとλを基数とする.κ=|X|, λ=|Y|, X∩Y=∅ となるようなX, Yを取る.

  1. κ+λ:= |X∪Y|
  2. κ・λ:= |X×Y|
  3. κ^λ:= |X^Y| ( X^Y := {f: Y→X} )
  4. κ=λ+μとなる基数μが唯一つ存在するとき,κ-λ:=μ
  5. κ=λ・μとなる基数μが唯一つ存在するとき,κ÷λ:=μ

nが有限基数のときκのn個の積とκ^nは一致する.

補題2

任意の基数κ, λについて
κ≦λ ⇔ ある基数μが存在してκ+μ=λ

補題3

任意のアレフに対しアレフ^2 =アレフ

証明

無限順序数αに対し |α×α|=|α| を示せばよい.

(i) α=ω のときは明らか.

(ii) α=β+1 のとき,明らかに|α|=|β|なので |α|=|β|=|β×β|=|α×α|.

(iii) αが極限順序数のとき.
あるβ<αに対し |β|=|α| となるときは(ii)と同様 |α|=|α×α| となる.なので全てのβ<αに対し |β|<|α| であるとする.

α×α=∪_{β<α}β×βである.α×αに順序Rを

と定める.このRは整列順序である.また,β<αに対しβ×β⊂α×αはinitial R-sectionとなる.

順序数ψ(β)を ψ(β) ≅ (β×β, R)で定める.β<αのとき
|ψ(β)| = |β×β| = ( |β| or 有限 ) < |α|
故にψ(β)<αである.よって
α×α=∪_{β<α}β×β≅∪_{β<α}ψ(β)≦α
従って|α×α|≦|α|である.

補題4

基数κ, λ≧2に対しκ+λ≦κ・λ

証明

κ=|X|, λ=|Y|, X∩Y = ∅ となる集合を取る.a≠bとなるa, b∈X,s≠tとなるs, t∈Yを取る.φ: X∪Y→X×Y を
x∈X のとき φ(x) := <x, s>
y∈Y, y≠s のとき φ(y) := <a, y>
φ(s) := <b, t>
と定めればφは単射である.

補題5

基数κ, λ, μとアレフアレフがκ・アレフ≦λ+μを満たす時,κ≦μまたは アレフ≦λ.

証明

κ=|X|, λ=|Y|, μ=|Z| となる集合X, Y, Zと アレフ =|W| となる整列順序集合Wを取る.Y∩Z = ∅ としてよい.仮定より単射 f: X×W→Y∪Z が存在する.U := f^{-1}(Y), V := f^{-1}(Z) とすれば |U|=|Y|=λ, |V|=|Z|=μ, X×W=U∪V (disjoint union) である.

(i) {x}×W⊂U となる x∈X が存在するとき.
アレフ = |W| = |{x}×W|≦|U| = λである.

(ii)どの x∈X についても ¬{x}×W⊂U となるとき.
w_x := min{ w∈W | <x, w> ∈V } と書けば
κ= |X| = | { <x, w_x> | x∈X } |≦|V| =μ.

補題6

基数κ, λとアレフアレフアレフ≦κ・λを満たす時,アレフ≦κまたは アレフ≦λ.

証明

κ=|X|, λ=|Y| となる集合X, Yとアレフ=|W| となる整列順序集合Wを取る.単射 f: W→X×Y が存在する.π_X, π_Yをそれぞれ X×Y から X, Y への射影として U := π_X(f(W))⊂X, V := π_Y(f(W))⊂Y と置く.Wの整列順序を使って,U, Vは整列可能である.またf(W)⊂U×Vである.このとき補題3 を使って
アレフ = |W|≦|U×V| = |U|×|V| = max{ |U|, |V| }.
故に アレフ≦|U| または アレフ≦|V| であるが,それぞれ アレフ≦κ, アレフ≦λを導く.

補題7

任意のアレフアレフ, アレフ' に対し アレフアレフ' = アレフ+アレフ' = max{ アレフ, アレフ' }.

証明

アレフ' ≦ アレフ だとすると
アレフ
アレフ+アレフ'
アレフアレフ' (補題4 による)
アレフアレフ
= アレフ (補題3 による)
= max{ アレフ, アレフ' }

定理8

次の命題は(ZF上)同値

  1. 選択公理
  2. 任意の無限基数κについて,κ^2=κ
  3. 任意の無限基数κ, λについて,κ+λ=κ・λ
  4. 任意の無限基数κ, λについて,κ+λ=κ または κ+λ=λ
  5. 任意の無限基数κ, λについて,κ・λ=κ または κ・λ=λ

証明

(1 ⇒ 2) 整列可能定理により,全ての無限基数は アレフ なので補題3 より明らか.

(2 ⇒ 3) κ+λ= (κ+λ)^2 = κ^2+2・κ・λ+λ^2≧κ・λ≧κ+λ

(3 ⇒ 1) 整列可能定理を示す.Xを集合としてκ:=|X| と置く.アレフ をXのHartogs numberとする.仮定(3)よりκ+ アレフ =κ・アレフ となる.Hartogs numberの定義より ¬アレフ≦κだから,補題5よりκ≦アレフ となる.故にXは整列可能である.

(1 ⇒ 4) 整列可能定理により,全ての無限基数は アレフ なので補題7 より明らか.

(4 ⇒ 1) κ+λ=κのとき明らかにλ≦κ.同様にκ+λ=λからκ≦λが従う.故に,選択公理と同値な定理1 の(2)が成立することが分かる.

(1 ⇔ 5) は (1 ⇔ 4) と同様.

定理9

F(X) := { Y⊂X | Yは有限集合 } と置く.
選択公理 ⇔ 無限集合Xに対し|X|=|F(X)|

証明

(⇒) f: ∪_{n=0}^{∞}X^n→F(X) を f(<a_1, …, a_n>) := {a_1, …, a_n} で定める.これは明らかに全射なので |F(X)|≦*|∪_{n=0}^{∞}X^n|.よって選択公理より |F(X)|≦|∪_{n=0}^{∞}X^n|.故に選択公理に気をつけると
|X| ≦ |F(X)| ≦ |∪_{n=0}^{∞}X^n| = |∪_{n=0}^{∞}X| = |X×ω| = |X|.

(←) 定理8 の条件(2)を示す.Xを集合とするとき X×X = { <a, b> | a, b∈X } で,<a, b> = { {a}, {a, b} } が順序対の定義だったから X×X⊂F(F(X)).故に
|X| ≦ |X×X| ≦ |F(F(X))| = |F(X)| = |X|.

定理10

選択公理 ⇔ |X|<|X∪Y| かつ |Y|<|X∪Y| ならば X∪Yは有限集合

証明

(⇒) 定理8 の(4)より明らか.

(←) 選択公理が成立しないと仮定すると,定理1 により¬|X|≦|Y| かつ ¬|Y|≦|X| となるような集合X, Yが存在する.明らかに |X|≦|X∪Y| かつ |Y|≦|X∪Y| である.X∪Y は無限集合だから |X| = |X∪Y| または |Y| = |X∪Y| でなければならない.しかし |X| = |X∪Y| なら |Y|≦|X∪Y| = |X|,|Y| = |X∪Y| なら |X|≦|X∪Y| = |Y| となり矛盾する.

定理11

選択公理
⇔「Xが有限集合⇔(X, ≦)が整列順序ならば(X, ≧)も整列順序」

証明

(⇒) 「Xが有限集合⇒(X, ≦)が整列順序ならば(X, ≧)も整列順序」は明らか.逆を示すため,Xが「(X, ≦)が整列順序ならば(X, ≧)も整列順序」を満たすとする.整列可能定理より整列順序(X, ≦)が存在する.(X, ≦)≅αとなる順序数(α, ≦)が存在する.(X, ≧)の整列性より(α, ≧)も整列順序.よって明らかにα<ω,即ちXは有限集合.

(←) 対偶を示す.選択公理が成立しないとすると,整列できない無限集合Xが存在する.このXは明らかに「(X, ≦)が整列順序ならば(X, ≧)も整列順序」を満たす.

定理12

κ, λ, μ, νは無限基数を表すとする.

次の命題は(ZF上)同値

  1. 選択公理
  2. 任意のκに対しあるλが存在してκ=λ^2
  3. κ^2=λ^2 ならば κ=λ
  4. κ<λかつμ<ν ならば κ+μ<λ+ν
  5. κ<λかつμ<ν ならば κ・μ<λ・ν
  6. κ+μ<λ+μ ならば κ<λ
  7. κ・μ<λ・μ ならば κ<λ
  8. κ<λ ならば λ-κが存在する
  9. κ<λ ならば λ-κ=λ
  10. κ<λ ならば λ=κ・μとなるμが存在する
  11. κ<λ ならば λ÷κが存在する
  12. κ<λ ならば λ÷κ=λ
  13. κ+μ=κ+ν ならば μ=νまたはμ, ν<κ
  14. κ+κ<κ+λ ならば κ<λ
  15. μ<κかつν<κ ならば μ+ν≠κ
  16. μ<κかつν<κ ならば μ・ν≠κ
  17. μ^κ<μ^λかつμ≠0 ならば κ<λ

証明

(1 ⇒ その他) 整列可能定理により,全ての無限基数は アレフ である.よって補題7 より 2~16 が従う.17は定理1より分かる.

後は逆を示せばよいので,各条件の下で選択公理と同値な整列可能定理を示す.その為には,Xを任意の無限集合,κ:= |X| としてκ≦ アレフ となる アレフ の存在を示せばよい.特に明記しない限り,アレフ はXのHartogs numberとする.( ¬アレフ≦κに注意しておく.)

(2 ⇒ 1) 仮定2. より,κ+アレフ=λ^2 となるλが存在する.アレフ≦κ+アレフ=λ^2 である.よって補題6 よりアレフ≦λとなる.従って補題2 によりλ=アレフ+μとなるμが取れる.このとき
κ+アレフ = λ^2 = (アレフ+μ)^2 = アレフ^2+2・アレフ・μ+μ^2 ≧ アレフ・μ.
よって補題5 から アレフ≦κまたはμ≦アレフ が分かる.¬アレフ≦κなのでμ≦アレフ,従ってλ= アレフ +μ≦ アレフ + アレフ = アレフ.故にλ= アレフである.よってκ≦κ+ アレフ =λ^2 = アレフ^2 = アレフ

(3 ⇒ 1) λ :=κ^{アレフ0}と置くとκ≦λかつλ^2=κ^(2・アレフ0)=κ^(アレフ0)=λ.故にλ =|Y|として アレフ をYのHartogs numberとすれば(λ +アレフ)^2=λ^2+2・λ・アレフ +アレフ^2≧λ・アレフ.また
(λ +アレフ)^2
=λ^2+2・λ・アレフ +アレフ^2
=λ+2・λ・アレフ +アレフ
≦λ・アレフ +2・λ・アレフ (補題4 より)
=λ・ 3・アレフ
=λ・アレフ
だから,(λ +アレフ)^2=λ・アレフ となる.よって(λ +アレフ)^2=λ・アレフ =λ^2・アレフ^2=(λ・アレフ)^2が成立.従って仮定3 よりλ +アレフ =λ・アレフが分かる.補題5 からアレフ≦λまたはλ≦アレフとなる,アレフ\not≦λだからκ≦λ≦アレフ

(4 ⇒ 1) λ :=アレフ0・κと置くとκ≦λかつ2・λ=2・アレフ0・κ=アレフ0・κ=λである.λ=|Y|としてアレフをYのHartogs numberとする.λ<λ +アレフかつアレフ <λ +アレフと仮定すると仮定4 よりλ +アレフ <(λ +アレフ )+(λ +アレフ )=2・λ +2・アレフ =λ +アレフとなって矛盾する.故にλ=λ+アレフ または アレフ =λ+アレフ である.¬アレフ≦λなのでアレフ =λ +アレフでなければならない.即ちκ≦λ≦アレフ

(5 ⇒ 1)は(4 ⇒ 1)と同様.

(6 ⇒ 1) ¬κ≦アレフと仮定する.アレフ <κ+アレフ である.故に アレフ +アレフ =アレフ <κ +アレフだから仮定6 よりアレフ<κ,よって矛盾.

(7 ⇒ 1)は(6 ⇒ 1)と同様.

(8 ⇒ 1) アレフ≦κ+アレフである.アレフ<κ+アレフと仮定する.仮定8 よりκ+アレフ=アレフ+μとなるμが唯一つ存在する.μ=κもμ=κ+アレフもこの式を満たすから,一意性よりκ=κ+アレフ.従ってアレフ≦κとなり矛盾.故にアレフ =κ +アレフであるのでκ≦アレフ

(9 ⇒ 1)を示すには(9 ⇒ 8)を示せばよいが,それは明らか.

(10 ⇒ 1) アレフ≦κ +アレフだから,仮定10 よりκ +アレフ =アレフ・μとなるμが存在する.従ってμ・α≦κ +アレフ なので補題5 より アレフ≦κまたはμ≦アレフアレフ はXのHartogs numberだったから¬アレフ≦ |X|=κ,即ちμ≦アレフ である.よって補題7 よりκ +アレフ =アレフ・μ =アレフとなる.故にκ≦アレフ

(11 ⇒ 1)を示すには(11 ⇒ 10)を示せばよいが,それは明らか.

(12 ⇒ 1)を示すには(12 ⇒ 11)を示せばよいが,それは明らか.

(13 ⇒ 1) アレフ+κ=アレフ+(κ+アレフ)だから仮定13 よりκ=κ+アレフまたはκ, κ+アレフ < アレフである.¬アレフ≦κだからκ, κ +アレフ < アレフとなる.従ってκ≦アレフ

(14 ⇒ 1) アレフ+アレフ=アレフアレフ+κである.アレフ+アレフ<アレフ+κだとすると仮定14 からアレフ<κとなり矛盾するので アレフ=アレフ+κ.故にκ≦アレフである.

(15 ⇒ 1)を示すには (15 ⇒ 9) を示せば良い.κ<λとする.補題2 よりλ=κ+μとなるμが存在する.仮定15 よりλ =μとなる,即ちμは一意に決まる.よってλ-κ=λである.

(16 ⇒ 1) κ≦κ・アレフ, アレフ≦κ・アレフなので,仮定16 よりκ=κ・アレフ または アレフ =κ・アレフ である.¬アレフ≦κだったから アレフ=κ・アレフ,従ってκ≦アレフ となる.

(17 ⇒ 1) μ:= 2^(κ^アレフ0) と置く.μ=|Y|としてアレフをYのHartogs numberとする.μ^κ= (2^(κ^アレフ0))^κ= 2^(κ^(アレフ0+1))=2^(κ^アレフ0) =μ≦μ^アレフ.μ^κ=μ^アレフだとするとアレフ≦μ^アレフ=μ^κ=μとなり矛盾するから,μ^κ<μ^アレフである.故に仮定17 よりκ<アレフ

参考文献

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