2015年08月14日更新

一般連続体仮説

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定義 無限濃度 κ に対して次の命題を CH(κ) で表す.

κ≦μ≦2κ ⇒ κ=μまたはμ=2κ

定義 次の命題を一般連続体仮説(Generalized Continuum Hypothesis)という.

任意の無限濃度κに対して CH(κ).

補題1 κ+1 < 2κ

証明 κ+1 = 2κ と仮定する.|X| =κ となる集合 X と ∞ ∉ X となる ∞ を取れば,全単射 g: P(X)→X∪{∞} が取れる.g(X) =∞ としてよい. f: κ*→X∪{∞} を

f(α) := g(Aα) (Aα⊂Xのとき.ここでAα:= { f(β) | β < α } )
f(α) := ∞ (そうでないとき).

で定める.α < β < κ* が f(α), f(β)≠∞ を満たすならば f(α)≠f(β) である.よって, κ* の定義から, f(α) = ∞ となる α < κ* が存在する.このとき γ := min{ α < κ* | f(α)=∞ } と置けば f|γ: γ→X は全単射である.故に X は整列可能であることが分かる.従って κ = κ+1 = 2κ となり矛盾する.

補題2 κ≧アレフ0 ならば 2κ\not\leqκ

証明 2κ≦κ と仮定する.|X| =κ となる集合 X を取れば,単射 h: P(X)→X が存在する. W := { (Y, R) | Y⊂X は無限集合,(Y, R) は整列順序 } と置く.

(Y, R)∈W を取る.全単射 k(Y, R): Y→Y が取れる.

順序数・濃度の簡単なまとめ命題5の証明により,全単射 Y×Y→Y が標準的に取れる.これを使えば命題11の証明と同様にして全単射 k(Y, R): Y→Y が取れる.

D(Y, R) := { x∈Y | あるZ⊂Xが存在して h(Z) = k(Y, R)(x) かつ x ∉ Z }

と定義する.D(Y, R)∈P(X) であるから h(D(Y, R))∈X である.

ここで h(D(Y, R))∈Y と仮定すると, k(Y, R) が全単射だから,ある y∈Y により k(Y, R)(y) = h(D(Y, R)) と書ける.すると D(Y, R) の定義より

y∈D(Y, R)
⇔ ある Z⊂X が存在して h(Z) = k(Y, R)(y) かつ y ∉ Z
⇔ ある Z⊂X が存在して h(Z) = h(D(Y, R)) かつ y ∉ Z
⇔ y ∉ D(Y, R)

となり矛盾する.故に h(D(Y, R)) ∉ Yである.

よって有限列 h(D(Y, R)) には X\Y の元が少なくとも一つ現れるから,一番最初に現れたものを g(Y, R) と書く.こうして写像 g: W→X が定義されるが,これは (Y, R)∈W に対して g(Y, R) ∈ X\Y を満たす.

今,κ≧アレフ0 だから N⊂X としてよい.すると写像 f: κ*→X が

f(α) := g(Xα, Rα) (ここで Xα := N∪{ f(β) | β < α } として Rα は 0 < 1 < … < f(0) < f(1) < … から定まるXαの整列順序とする.)

で定まる.この f は単射だから κ* の定義に矛盾する.

定理 CH(κ) ならば κ2 = 2・κ=κ .

証明 CH(κ) とすると κ≦κ+1 < 2κ から κ=κ+1 である.よって

κ≦2・κ≦2・2κ = 2κ+1 = 2κ

となる. 2・κ=2κ と仮定すると補題2に矛盾するから, CH(κ) により κ=2・κ である.よって

κ≦κ2≦(2κ)2 = 22・κ = 2κ

である. κ2 = 2κ と仮定すると補題2に矛盾するから, CH(κ) により κ=κ2 である.

一般連続体仮説 ⇒ 選択公理

定理 CH(κ) かつ CH(2κ) ならば 2κ*

証明 2κ*≦22κ2 である.

|X| =κ となる集合 X を取る. | P(Γ(X)) | = 2κ* である. Δ⊂Γ(X) を取る. α∈Δ に対して Sα := { R | R はある Y⊂X の整列順序で (Y, R) ≅ α } とすれば Sα⊂P(X×X) である.写像 f: P(Γ(X))→P(P(X×X)) を f(Δ) := ∪α∈ΔSα と定義する.この f は単射である.

CH(κ) により κ+1 = κ,κ2=κ だから

2κ
≦2κ* < 22κ* = 22κ・2κ*≦22κ・22κ2
= 22κ・22κ = 22κ+2κ = 22κ+1
= 22κ

となり, CH(2κ) より 2κ = 2κ* である.故に κ*≦2κ だから κ < κ+κ*≦2κ+2κ = 2κ となるので, CH(κ) により κ+κ* = 2κ である.故に 2κ* である.

定義 次の命題をAleph Hypothesisという.

任意の順序数αに対して2アレフα = アレフα+1

明らかに, ZFC では「一般連続体仮説 ⇔ Aleph Hypothesis」である.

定理 ZFにおいて次が成り立つ.

  1. 一般連続体仮説 ⇒ 選択公理
  2. Aleph Hypothesis ⇒ 選択公理
  3. 一般連続体仮説 ⇔ Aleph Hypothesis

証明 (1)既に示したが別の証明方法として,選択公理が次の命題と同値であることからも従う.

任意の濃度 μ に対して「 μ≦κ0≦2μ, μ≦κ1≦2μ なる濃度 κ0, κ1 は比較可能」である.

(濃度の比較可能性を参照.)

(2)選択公理が「整列集合の冪集合は整列可能」と同値であることから従う.(整列可能定理についてを参照.)

(3) 1,2により明らか.

一般連続体仮説とAleph Hypothesisの特殊な場合として,連続体仮説( CH(アレフ0) ) と 2アレフ0=アレフ1 があるが,この二つは ZF で同値ではない.

参考文献

コメント

ワヘイヘイ | 2015年6月28日 23:39

すごい!いつも更新楽しみにしています!

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