the Axiom of Multiple Choice
定理1 Xは ¬∅∈X なる集合を表すとし,λは基数を表すとする.MC(X, λ)で命題
X上の写像fが存在して,任意のx∈Xに対し f(x)⊂x, 0< |f(x)| <λ を満たす
を表すことにする.mを2以上の整数とするとき,次の命題は(ZF上)同値.
1. 選択公理
2(m). 任意の X に対し MC(X, m)
3. ある m≧2 が存在して任意の X に対し MC(X, m)
4. 任意の X に対しある m≧2 が存在して MC(X, m)
5. 任意の X に対し MC(X, ) (the Axiom of Multiple Choice)
証明 1⇔2(2) と 2(m)⇒3 と 3⇒4 と4⇒5は明らか.m≦nに対し 2(m)⇒2(n) も明らか.なので 5⇒1 を示せばよい.その為に,選択公理と同値な命題「任意の順序集合(x, ≦)は極大反鎖を持つ」を示す.
y⊂(x, ≦)が反鎖 ⇔ yの任意の異なる2元が比較不可能
証明はZornの補題・極大原理の定理1を参照.
(X, ≦)を順序集合とする.P := P(X)\{∅},Q := { Y∈P | Yは有限集合 } と置く.P に仮定を適用して f: P→Q を得る.Y∈P に対し f(Y)⊂Y である.g(Y) := { a∈f(Y) | aは(f(Y), ≦)の極小元 } と置けば,各 g(Y)⊂X は反鎖で,∅ ≠g(Y)⊂Y である.反鎖 K に対し Y(K) := { x∈X\K | K∪{x}は反鎖 } と定義する.
Xが極大反鎖を持たないと仮定すると,各 Y(K) は空でない.¬≦|P(X)|となる最小のアレフを取る.写像 h: →P(X)を
と定義すると,これは単射になるので矛盾する.故にXは極大反鎖を持つ.
「AMC(=the Axiom of Multiple Choice)⇒AC(=選択公理)」の証明に使われている命題を追っていくと,AMC⇒ACのこの証明には基礎の公理が使われていることが分かる.実は基礎の公理を仮定しない場合,AMC⇒ACは証明できないことが知られている.一方,定理における4⇒1は基礎の公理無しで証明することができるので,その証明を書いておく.
証明 選択公理と同値な次の命題を示す.
任意の集合 X に対しある正整数 m が存在して
ある順序数αとα上の関数fが存在して ∀β<α(|f(β)|≦m) かつ X=∪β<α f(β)
整列可能定理についての定理5の条件4のこと.証明は整列可能定理についての一番最後を参照.
Xを任意の集合として P0(X) := P(X)\{∅} と置く. 仮定(定理の条件4)によりある正整数mとある関数 g: P0(X)→P(X) が存在して 任意の Y∈P0(X) に対し g(Y)⊂Y, 0 < |g(Y)| < m+1 を満たす. ¬U⊂X となる集合 U を一つ取り,g(∅) := Uと定義しておく. アレフで,¬≦ |P(X)| となるものが存在するので,その様なのうち最小のものを取る. 順序数α<に対し
G(α) := g(X\∪β<α G(β))
で写像 G: →P(X)∪{U} を定める. 明らかに,G(α)=G(β)≠U ならばα=βである. G(α)=U となるαが存在しないと仮定すると, G: →P(X) は単射となる. しかしこれは¬≦ |P(X)| に矛盾する. 従って G(α)=U となる順序数αが存在するので, そのようなαのうち最小のものを取る. このとき f := G|α とする. U = G(α) = g(X\∪β<α G(β)) だから, ∪β<α G(β)=X である. またβ < αに対し f(β) = G(β) = g(X\∪γ<β G(γ)) だから g の性質より |f(β)| ≦ mが分かる. よってこの f が条件を満たす.
定理2
選択公理
⇔集合 X が「任意の x∈X に対し |x|≧2 」を満たすとするとき,
X 上の写像 f が存在して,任意の x∈X に対し f(x) ⊊ x, 0<|f(x)|<∞ を満たす.
証明 (⇒)明らか.
(←) を互いに素な非空集合の族とする. P := {A⊂ | |A|≧2 } として P に仮定を適用し写像 f を得る. |A|=1 となるような A⊂に対しては f(A) := A として f の定義を拡張しておく. S := ∪λ∈Λ∩n∈N fn(Xλ)と置く. (但し fn は f のn回合成である.) このときSがの選択集合である.
定理3次の命題は(ZF上)同値.
- 選択公理
- 集合 X が「任意の x∈X に対し x≠ ∅ 」を満たすとするとき, X 上の写像 f が存在して「任意の x∈X に対し ∅ ≠ f(x)⊂x, |f(x)| は奇数」を満たす.
- 集合 X が「任意の x∈X に対し |x|≧2 」を満たすとするとき, X 上の写像 f が存在して「任意の x∈X に対し ∅ ≠ f(x)⊂x, |f(x)| は偶数」を満たす.
証明AMC ⇒選択公理により明らか.
定理3の条件2をOAC(=Odd Axiom of Choice),条件3をEAC(=Even Axiom of Choice)という. この証明は勿論基礎の公理が使われているが,実は基礎の公理無しで次のことが言える.
定理選択公理 ⇔ OACかつEAC
証明定理2を使う. 集合 X が「任意の x∈X に対し |x|≧2 」を満たすとする. X にEACを適用して写像 g を得る. 集合 { g(x) | x∈X }にOACを適用して写像 h を得る. このとき x∈X に対して f(x) := h(g(x)) と置けば 写像 f は「任意の x∈X に対し ∅ ≠f(x) ⊊ x, |f(x)|<∞」を満たす.
参考文献
- Horst Herrlich『Axiom of Choice』
- H. Rubin and J. E. Rubin『Equivalents of the Axiom of Choice, II』
- K. Keremedis, Bases for Vector Spaces over the Two-Element Field and the Axiom of Choice, Proc. Amer. Math. Soc. 124 (1996), 2527--2531
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