2016年05月22日更新

Urysohnの補題

PDF版

次の命題をUrysohnの補題という.

命題 X を T4 空間, F, G⊂X を互いに素な閉集合とするとき,連続関数 f: X→R で x∈F に対して f(x)=0,x∈G に対して f(x)=1 となるものが存在する.

命題 X を T4 空間, F⊂X を閉集合, U⊂X を開集合, F⊂U とする.このときある開集合 V が存在して F⊂V, cl(V)⊂U となる.

証明 Uc⊂X は閉集合で F∩Uc= ∅ である. X が T4 だから,ある開集合 V, W⊂X が存在して F⊂V, Uc⊂W, V∩W= ∅ となる. V∩W= ∅ だから V⊂Wc で, Wc は閉集合だから cl(V)⊂Wc である. Uc⊂W だから Wc⊂U なので cl(V)⊂U となる.

R := { m/2n | n≧0, 0≦m≦2n } とする.

補題 (X, O) を位相空間, F⊂X を閉集合とする.写像 U: R→O が「 r < s ならcl(U(r))⊂U(s) 」と F⊂U(0) を満たすとする.このとき連続関数 f: X→R で x∈F に対して f(x)=0,x∈U(1)c に対して f(x)=1 となるものが存在する.

証明 a∈R に対して ∪a<r∈RU(r)c=∪a<r∈Rcl(U(r))c である.

R の点列 a0 > a1 > … > a を limn→∞an=a となるように取れる(Rは整列可能なので選択公理は不要).このとき任意の a<r∈R に対してある n∈N が存在して U(r)⊃U(an) であり,また任意の n∈N に対してある a<r∈R が存在して U(an)⊃cl(U(r)) である.故に

a<r∈RU(r) ⊃ ∩n∈NU(an) ⊃ ∩a<r∈Rcl(U(r)) ⊃ ∩a<r∈RU(r)

となる.よって補集合を考えれば ∪a<r∈RU(r)c = ∪a<r∈Rcl(U(r))c である.

f: X→R を f(x) := inf{ r∈R | x∈U(r) } で定める.明らかに x∈F に対して f(x)=0 , x∈U(1)c に対して f(x)=1 である.よって f が連続であることを示せばよい. (a, b)⊂R を開区間とする.このとき

f-1(a, b)
= { x∈X | a < f(x) } ∩ { x∈X | f(x) < b }
= { x∈X | ある r > a に対して x ∉ U(r) }∩{ x∈X | ある r < b に対して x∈U(r) }
=∪r > aU(r)c∩∪r < bU(r)
=∪r > acl(U(r))c∩∪r < bU(r)

も開集合である.故に f は連続である.

定理 選択公理 ⇒ Urysohnの補題

証明 (X, O) を T4 空間, F, G⊂X を互いに素な閉集合とする. X の閉集合全体を A とする. S := { <F, U>∈A×O | F⊂U } とすると, <F, U>∈S に対して O<F, U>:= { V∈O | F⊂V, cl(V)⊂U } ≠ ∅ である.故に { O<F, U> } <F, U>∈S の選択関数 g: S→O が存在する.

U(0) := f(F, Gc) , U(1) := Gc として U(m/2n) := g(<cl(U((m-1)/2n)), U((m+1)/2n)>) と定める.

この U は前補題の条件を満たす.故にUrysohnの補題が成り立つ.

今の証明では選択公理を用いたが,これは次のようにすれば従属選択公理でよいことが分かる.

T := { <U1, …, U2n> | n∈N, Ui∈O, 1≦i≦2n-1に対して cl(rUi)⊂Ui+1 }

として T 上の二項関係 R を

<U1, …, U2n>R<V1, …, V2m> ⇔ m=n+1かつUi=V2i

で定める.この R は明らかに「任意の a∈T に対してある b∈T が存在して aRb 」を満たす.故に従属選択公理から a1 := <F, Gc> として列 a1Ra2R… が存在する.このとき an = <Un,1, …, Un, 2n> と書ける. U(m/2n) := Un, m とすればよい.

更に容易に分かるように,従属選択公理はDMC(従属選択公理についてを参照)でもよい.

定理 DMC ⇒ Urysohnの補題

証明 DMCにより族 { Fn } n=1 を取る.以下のように書けると仮定してよい.

Fn= { xn(1), …, xn(mn) }
xn(j) = <Vn, 1(j), …, Vn, 2n(j)>
m1 = 1
V1, 1(1)∈OF, Gc
V1, 2(1) = Gc

また任意の n > 1 と 1≦j≦mn に対して,ある k=kn, j が存在して xn-1(k)Rxn(j) とできる,と仮定してよい.このとき Un, i := ∩1≦j≦mnVn, i(j) とすれば an := <Un, 1, …, Un, 2n>∈T である.

1≦i≦2n-1 に対して cl(Un, i) = ∩1≦j≦mncl(Vn, i(j)) ⊂ ∩1≦j≦mnVn, i+1(j)=Un, i+1

また

Un+1, 2i = ∩1≦j≦mn+1Vn+1, 2i(j) = ∩1≦j≦mnVn, i(kn, j) = ∩1≦j≦mnVn, i(j) = Un, i

となるから anRan+1 である.故にUrysohnの補題が従う.

また,Urysohnの補題は ZF で証明できないことが知られている.

コメント

(名無し) | 2016年5月21日 21:24

U(2r-a)という集合を証明の中で取ってきてますけど,これって取れますか?

というのも,Uは有理数(の一部)だけで定義された写像ですが,aは実数なので,2r-aは一般には有理数ではないと思うのですが.

管理人 | 2016年5月22日 09:52

指摘ありがとうございます。その通りです。証明を修正しました。

(名無し) | 2020年9月29日 16:00

AC⇒Urysohnの証明で、U(0):=f(F,G^c) の部分はfではなくてgのことではありませんか?

コメントする

感想、意見、質問など何でもどうぞ。
※書き込んだのに表示されない場合は、ページをリロードしてみてください。