2013年01月13日更新

任意の群のp-Sylow部分群の存在

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定義 Gを群,pを素数とする.

  1. 部分群H⊂Gがp-部分群 ⇔ 任意の元x∈Hの位数がp冪である
  2. 部分群H⊂Gがp-Sylow部分群 ⇔ Hは極大なp-部分群である

定理 pを素数とする.このとき
選択公理 ⇔ 任意の群Gのp-Sylow部分群が存在する.

証明 (⇒) Zornの補題より明らか.

(←){X_λ}_{λ∈Λ}を非空集合の族とする.Gλ := { x1x2… xn | n∈N, xi∈Xλ,同じ元はp個連続して現れない } とするとGλは結合(x1… xn, y1… ym) |→ x1… xny1… ymにより群になる.(ただし,結合により同じ元がp個連続した場合はその部分を単位元1とみなす.)

G := ⊕λ∈ΛGλとしてπλ: G→ Gλをλ成分への射影とする.仮定によりGのp-Sylow部分群H⊂Gが存在する.このときπλ(H)はGλのp-Sylow部分群である.

明らかにπλ(H)はp-部分群である.πλ(H)⊊ Hλ⊂Gλをp-部分群とする.g∈Hλ\πλ(H)が取れる.iλ: Gλ→ Gを標準入射としてHとiλ(g)で生成される部分群を H'⊂GとすればH ⊊ H'⊂Gで H' はp-部分群である.故にHの極大性に矛盾する.従ってπλ(H)はp-Sylow部分群である.

特にπλ(H)≠1であることに注意しておく.

g=x1… xn∈πλ(H)\{1} (xi∈Xλ)とすると, gの位数kは勿論有限であり 1 = gk = (x1… xn)(x1… xn)…(x1… xn)である.よって積の定義から,x1=xnでなければならない.

次にg=x1… xn∈πλ(H)\{1}, h=y1… ym∈πλ(H)\{1} (xi, yi∈Xλ)とすると,x1=y1である.

gh = z1… z_l (zi∈Xλ)と書ける.

(i) m+n=lのとき.この場合,先に述べたことによりx1=z1=z_l=ym=y1である.

(ii) m+n<lのとき.この場合,積の定義からxn=y1であるから,x1=y1である.

即ち,各λ∈Λに対してπλ(H)\{1} の元の先頭に来るXλの元は一意に定まる.そこでそれをxλとすれば(xλ)λ∈ΛΠ_{λ∈Λ}X_λが取れる.

参考文献

コメント

sepia | 2021年7月31日 02:17

(ii) m + n < l とありますが, 不等号の向きが逆であると思います.

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