2020年07月25日更新

レビューを書くページ

当サイトの圏論PDFのレビューを読者の皆さんが自由に書くためのページです。(Amazonで数学書に付いているカスタマーレビューのようなものをイメージしてます)

こういった内容が書いてあるとか、こういうところが分かりやすいとか、逆にこれが書いてないとか、ここが分かりにくいとか、良い点悪い点をコメント欄に書いてみてください。(長文でも、レビューとまではいかない簡単な感想みたいなものでも大丈夫です。そういったものは時々Twitterで書いてくれる人がいるのですが、Twitterだと後で他の人が参考にできないので、残すためのページを作ったという経緯になります。)

コメント

 ★★★★☆ モナドを理解するために | 2020年7月25日 14:12

「モナドは単なる自己関手の圏におけるモノイド対象だよ。何か問題でも?」

プログラミング業界で有名(?)な上記の言葉を理解すべく本PDFを読み始めました。
数学的素養はほとんど無いため具体例に関してはほとんど理解できていませんが、
暗号を解読する気持ちで読み進め、圏論(さらには数学)の楽しさを知りました。

モナドは高次元圏で語られており、これだけでモナドの理解は難しいと感じたため
星4つとさせていただきますが、本PDFは圏論学習の主軸として大いに役立ちます。

数学的素養の足りなさ故であるとは思うのですが、『明らか』と書かれている部分に
いまだ理解できない箇所があることは(強いて言えばという程度ですが)心残りです。
例えば、第3章 高次元圏 ・2-category のp.21に『(∗∗) は明らかに可換である. 』
とありますが、『○○より明らか』等と何か少しでもヒントがあれば嬉しいです。

匿名 | 2020年8月 2日 23:36

★★★★☆

無料でこれが読めること。
つどい系イベントなどで、圏論の流布を行ったことなど、
素晴らしい活動をありがとうございます。

私は、ここの圏論のテキストに関しては、まだまだ名著とは程遠い
未完のものだと感じます。

Maclane は、小さな明快な道具、
Awodey は、構成的視点、
Riehl は、2圏による圧倒的抽象化、
Cisinski は、具体的な圏論
Kashiwara は、圏論の核としての極限と表現可能性

など、圏論を語るを語る上で、
筋が通っています。

alg-d さんは、おそらくまだまだ若い方であるとおもいますので、
圏論に関してなんらかの筋を通すことをされてはいいのではにないか。
とも思います。

私が個人的に求めるようなものであれば以下のような、
例えば、「3次元的視認性」を徹底的に追求することなどが考えられます。

図式に関して、
人間の視認性などを考慮し、3次元空間の特性を最大限に利用し、
視覚的にわかりやすい工夫をしているとは到底言えないものが多いと感じています。

Kan 拡張を描くにしても、base となる空間はどれなのかが、
など、図式中の対象の配置などにも気をつけるともう少しわかりやすい絵になるのではないか、と感じています。

ただ、こういうところにこだわらなくとも、
「選択公理の沼を徹底的に圏論で暴くことにした」
など、全く別の種類の芯を通すようなことをしても
それはそれで、美しい名著となるような気がします。

今後のご活躍にも期待しておりますが、
くれぐれもご自愛ください。

(2017年以降の更新はあまり詳しく見ていないので、
(あるいは、まだまだコンマ圏の威力を理解していないので、)
それ以降のpdf はあまり目を通しておりませんが
コメントさせていただけることを光栄に感じた次第です。
不適切であれば取り下げて下さい。)

通りすがり | 2020年8月 3日 23:34

上のコメントについて、通りすがりの市民ですが私の意見を述べさせてもらいます。alg_d氏の著作の土台となっているのは私のセミナーですので、「筋が通っていない」との指摘は他人事とは思えないため、私の意見を寄せさせていただきます。

このシリーズは「Kan拡張を通して圏論を記述する」といった極めて普遍的な筋を通していると思います。MacLaneは圏論の基礎で「すべての概念はKan拡張である」と述べながらも、実際のKan拡張への記述はほとんどなく、コンマ圏を用いた各点Kan拡張によるCalculationなどの記述はダイヤグラムチェースの醍醐味を全く感じられない無味乾燥な記述にとどまっています。
alg_d氏の著作の土台となったセミナーは、そういった「MacLaneの本で全ての概念はKan拡張と書いてあるが、それはどういうことなのか?」といった皆さんが感じているモヤモヤを解消する目的で開催したものです。その目的としては極めて完成度の高いものであると自負しております。ただ、ダイヤグラムチェースはPDFで見てもなかなかダイナミズムが伝わらない要素はあるので、確かにそこは改善余地があるかもしれません。私のセミナーを生で見ていただければよかったですね。

一方名著と挙げられている書評は理解に苦しむ面もあります。Kashiwaraは確かに表現可能性ゴリ押し系なので、言ってる意味は分かりますが、忠実充満に押し込めるとはいえ何でも前層と同一視していくあのスタイルは好きではありません。(Baseとなる空間がどこか分からない、とご指摘の方がその本を名著と呼ぶのが不思議です)
CisinskiはHigher Categoryの本としては優秀ですが、内容のどこが具体的なのかは全く分かりません。違う本を指しているのでしょうか。Awodeyは中身が薄すぎて、あまり比較対象にもならない気もします。数学の人が使うにしては内容がなさすぎるのではないでしょうか。Riehlは個人的には結構好きです。

そしてMacLaneは上に述べた通り、著名ですが非常に内容としては残念な本だと思っています。前半は「普遍性は様々なところで現れる」というテーマに沿った味わい深い内容だと思いますが、途中からアーベル圏とかモナドとかエンドを良く分からない順番で詰め込み、最後のKan拡張のあたりは非常に残念な内容だと思います(特に、Lan, RanというNotationは最悪です)。私は人類の中でも相当MacLaneを読んだ部類の人間だと思いますが、あれを名著と呼ぶ方の感覚は分かりません。
言っておきますが、私はMacLane氏の著作自体は相応に好きです。彼はHomologyとかSheaves in Geometry and Logicとかでも結構脇道の与太話を書きますが、その味わいの深さが楽しめるポイントだと思います。個人的な印象ですが、MacLane氏はあくまで具体的な対象の中に普遍性を見出すタイプであり、Grothendieck流ともいえる抽象度の高い2-categoricalなoperationは好きでなかったのではないかという気がします。それだけにCWMの後半は上手くまとめ損ねたな、という印象が非常に強いです。最後にKan拡張に収斂させるなら、我々の手法のように、最初から高度に抽象化するほうが手法としてはスマートなはずです。

そういう意味で、Grothendieckの著作を最初に読んでもいまいち抽象的過ぎて味わいを感じれない人がいるように、壱代整域流のKan拡張の導入もそうなってしまう人はいるかもしれません。ただ、もしあなたが圏論の基礎を読んで、最後の方さっぱり何が書いているかよく分からないなとモヤモヤした気持ちでいるとするなら、このPDFは非常に大きな感動を与える事だと思います。なので、やはり圏論の基礎くらいは本当に基礎中の基礎なので、まずは半年くらいで気合で読みましょうという事だと思います。以上、通りすがりの一般市民の意見でした。

(名無し) | 2020年8月 5日 16:30

匿名です。
私が、名著としているという基準は、
総合的な判断です。

Lan Ran の記法に関して私は、全く逆の立場であります。
これは、Riehl でも継承されております記法ですし、
私としては、Kan拡張が随伴であることを端的に表していますので、
これは非常に良いのではないかと思います。
Kashiwara も Kan 拡張を随伴として構成しております。

Cisinski は新しいものしか知らず、
Homotopical Algebra and Higher Categories
において、非常に明快な単体複体の世界が圏の上に展開されています。
これは是非おすすめできる仕上がりではないかと存じ上げます。
こういったモノが、部品から作られている様が明快に記されており、
自然性などの議論が具体的厳密性で言えば、どういうモノなのか、
を私は Cisinski の書籍で知りました。

MacLance 氏について、
Sheaves in Geometry and Logic はちょうど読んでいるところで、
かつ、Homology に関しても、最近目を通した程度であり、
私は、MacLane 氏の Category Theory for working mathematicians
に関して、それほど良い印象をもてるほどすべてを知り尽くしたとはいえていません。

私基準で申し上げますこと大変恐縮ですが、
我々が知っている以上に MacLane 氏から得られる文脈にひそむ行間がかならずあるだろうと言う意味で、名著から外すことはできませんでした。
そう言う意味で、気合で読むことはあまり合理的とはいえないのではないでしょうか。私はMacLane に関しては、辞書的な使い方が良いのではないかと思います。

Kashiwara 氏の書籍の圏論が優れているということと、
あれが名著であることはやや違うことと考えていまして、
あれだけ、精密にSet の上で極限を作っておけば、いろいろと
証明など、すべて自明なものとなってしまいます。
そう言う意味で、他書にはない抜きんでた良さがあります。

私は、alg-d 様、通りすがり様の推奨している
コンマ圏論について、まったく知らないことばかりであり、
かつ、何がどう優れているのか、といったことが、当サイトのpdf を読んでいるだけではまったくわかりませんでした。(少なくとも2016年頃のpdf に関しては)
もしよろしければ、コンマ圏の醍醐味などご教授いただけましたら、幸いです。
あるいは、今後の整備に期待させていただきます。
どうぞ、今後ともよろしくお願いします。

通りすがり | 2020年8月 5日 21:22

通りすがりです。

私はKan拡張は随伴である事を極めて強く用いる派ですが、Lan/RanというNotationはセンスが悪いと感じました。おそらくこれはNotationに対する趣味の問題でしょう。私の選好するNotationはKashiwaraと同じ†を使うものです。同書の他のNotationは苦手なのですが。

あと、凄く個人的な趣味なのですが、私は米田埋め込みを「ユニタリ変換」のようなアナロジーでとらえています。なので、†で書きたいのです。このNotationなら米田の補題は別の形ではy†y=Idと書けます。なんかユニタリ行列みたいじゃないですか。こういうアナロジーが結構インスピレーションを刺激してくれるので、この書き方が好きというだけです。Lan/Ranだとそんな感じにならないですよね。

Cisinskiは同じ本を指していますね。ただ、この本は少し階層が違う本ではないでしょうか。Higher Categoryの教科書ですので、圏論の基礎程度の内容はすべて分かっている方が読むはずの本だと思います。個人的には、比較的モデル圏の使用量がマイルドな(∞,1)-圏の導入書としては注目しています。

「圏論の基礎を辞書的に読む」という方は結構いるのですが、私は謎めいた主張だと思います。何故ならば本当に基礎的な内容しか書いていないからです。これはこの本が書かれた1970年代レベルの圏論と比較しても、かなりElementaryな内容しか書かれていないものです。かといってAbel圏や加法圏の内容が専門的に詳しい訳でもないので、この本を辞書的に用いるユーザー層は正直言って分かりません。
幸いにして具体例が豊富にありますので、それを一つ一つちゃんとフォローしていけば、学部1-2年生でも読めるはずです。一般的にはあまり習わないStone-Cechコンパクト化とかもここで知ったりしましたね。気合でと書きましたが別に気合を出すほどの本でもないと思います。ただ、後半は述べた通りごった返しておりますので、そこを整理して理解するのには気合がいるかもしれないというだけです。

Kashiwaraに関しては同じ感想です。あそこまでパワフルにやっとけば何をするにも便利ですね。MacLaneのフィルター圏の章もこういうことをやろうとして中途半端になってしまったのではないでしょうか。

コンマ圏は、圏の圏CatにおけるLax-pull backを導入してそのUniversal Propertyをベースに議論を行う手法だと思っていただければ幸いです。各点Kan拡張の構成もこの議論から自明に従います(逆に各点Kan拡張の構成を「自然に」導出する方法は他にあるのでしょうか)。対照的な手法としては、米田の補題を用いて「こうやって計算したらこうなりました」とゴリ押しでやる手法もあると思いますが、Visibleなのでこの手法が好きという事です。上の「ユニタリ行列」のところもそうですが、私はNotationなどの視覚的要素におけるインスピレーションを極めて重視します。そこの趣味の差が出ているのではないでしょうか。

匿名 | 2020年8月 6日 01:04

匿名です。

> コンマ圏は、圏の圏CatにおけるLax-pull backを導入してそのUniversal
> Propertyをベースに議論を行う手法だと思っていただければ幸いです。

なるほどこれはピンときました。コンマ圏の構成が
Cat での pull back とみれると。
とてつもなく、広がりをもつ捉え方であり、
これはすごいことをおしえていただきました。
ありがとうございます。

ユニタリ変換のアナロジーも非常に美しく、
感銘いたしました。

重ね重ねこのような形ではございますがご指導ご意見賜りまして
ありがたく感じております。
拙いながらも何かしら社会に貢献できましたら幸いです。

MacLane に関してましても、
いつまでも辞書として放っておかないで、
少し「気合」を入れて残りの部分を読むべきかもしれません。

Cisisnski に関しては、
あれほど美しく、適用性に飛んだ米田埋め込みの舞台
( Cisinski の描く Presheaf )を私は他に知らないので、
Copresheaf や、isbell duality などと合わせて、
学部生などから遠ざけてしまうのではなく、なんとかして、
非常に身近な幾何として、学部生レベルのうちに触れる機会などあれば、
日本の大学教育として、良いのではなかろうか。といった願望を含んでおりました。(この Cisinski の本がなければ、私はこれらの概念に対して鮮やかに色塗りをすることすらでませんでした。)
しかしながら、おっしゃるように、いきなり、Presheaf の理論を入門書として読むには、やや無理があるのではないかということも薄々感じておりました。

こういった具体例も考慮に入れた圏論の名著があればいいだろうなあ、
という願望を勝手に仮定した文章となってしまっておりました。

通りすがりです | 2020年8月 6日 21:43

そうなんです。

コンマ圏の構成って(Laxな意味での)2圏Cat上でのPull-backなんですね。これは70年代には既に圏論の研究レベルでは常識化していたことなのですが、MacLaneではその視点がいまいち書かれておらず「コンマ圏って何なんだ?」という気持ちで初見では終わってしまうのが実情です。
この観点でKan拡張の理論を構成すると、驚くべき程の量の事が自明になります。本当に、自明な図式計算をするだけで大体のことが仕上がります。何かをいちいち暗記する必要もありません。だから「すべての概念はKan拡張」なのです。

∞圏の理論に関してはおっしゃる通りで、Cisinskiの本のようにホモトピー論に関する自然な視点を通して描かれている圏論の教科書は少なすぎると思います。読み物としてはSimpsonのHomotopy theory of Higher Categoryなんかもなかなかいいとおもいますが、理論として身に着けるにはなかなか難解ですね。
この辺を整理した教科書がなかなか出てこない背景も、現状の∞圏論の異常ともいえるModel圏依存が言えるでしょう。結局QuasicategoryもSimplical categoryもModel categoryもその他のどのモデルを使っても大抵の理論は展開できる訳ですが、やはりその基礎となる同値性の展開に相当苦労してしまう所が難しい所です。

自分の一定の理解が進んだら∞圏論祭をやりたいと思っていたころもありますが、今のところ力不足で全く進んでいません。一般市民の力量では今後進みそうな見通しもあまりないのが実情です。alg-d氏の今後の活躍に期待することとしましょう。

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