2013年10月19日更新

Loeb空間

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空でない閉集合全体のなす集合が選択関数をもつような位相空間をLoeb空間という.「任意の位相空間はLoeb空間である」が選択公理と同値であることはほとんど明らかであるが,これに気をつけると「任意のコンパクトHausdorff空間は,整列可能な稠密部分集合を持つ」「任意のコンパクトHausdorff空間は,整列可能な基底を持つ」「コンパクトHausdorff空間の任意の点は,整列可能な基本近傍系を持つ」が選択公理と同値であることが分かる.

定義 X を位相空間とし,X の空でない閉集合全体のなす集合を AX0 で表す.

  1. X がLoeb空間 ⇔ AX0 が選択関数を持つ.
  2. X が弱Loeb空間
    AX0 が以下を満たす関数 f: AX0→P(X) を持つ.

    任意の F∈AX0 に対して 0 < |f(F)| <∞ かつ f(F)⊂F

例1 X を位相空間とする.X が整列可能ならば X はLoeb空間である.

例2 X を任意の集合とする.X に離散位相を入れてAlexandroffの一点コンパクト化 X* = X∪{∞} を考える.AX*0 = { Y⊂X | |Y| < ∞ }∪{ Y∪{∞} | Y⊂X } だから,X*は弱Loeb空間である.

定理 次の命題は(ZF上)同値.

  1. 選択公理
  2. 任意の位相空間はLoeb空間である
  3. 離散位相空間はLoeb空間である
  4. 任意の位相空間は弱Loeb空間である
  5. 離散位相空間は弱Loeb空間である

証明 1⇒2 と 2⇒3 は明らか.

(3 ⇒ 1) {X_λ}_{λ∈Λ}を互いに素な非空集合の族とする.X:=∪_{λ∈Λ}X_λに離散位相を入れる.仮定により X はLoeb空間である.故に AX0 が選択関数を持つから,{ Xλ |λ∈Λ}⊂AX0 も選択関数を持つ.

1⇒4 と 4 ⇒5 も明らか.

(5 ⇒ 1) 3⇒1 と同様にして 5⇒AMC が分かるから,選択公理とAMCが同値であることより従う.

AMC (= the Axiom of Multiple Choice)とは次の命題のこと.

非空集合の族{X_λ}_{λ∈Λ}に対し,有限集合の族{F_λ}_{λ∈Λ}
任意のλ∈Λに対してF_λ⊂X_λとなるものが存在する.

同値性の証明はthe Axiom of Multiple Choiceを参照.

定理 選択公理 ⇔ 弱Loeb空間の開部分空間は弱Loeb空間である.

証明(⇒)明らか.

(←) 離散位相空間 X が弱Loeb空間であることを示せばよい.例2で述べたようにコンパクト化 X* は弱Loeb空間である.故に仮定から開部分空間 X⊂X* も弱Loeb空間である.

定理 次の命題は(ZF上)同値.

  1. 選択公理
  2. 任意のコンパクトHausdorff空間は,整列可能な稠密部分集合を持つ.
  3. 任意のコンパクトHausdorff空間は,整列可能な基底を持つ.
  4. コンパクトHausdorff空間の任意の点は,整列可能な基本近傍系を持つ.

証明 (1 ⇒ 2) 明らか.

(2 ⇒ 1) 離散位相空間 X がLoeb空間であることを示せばよい.コンパクト化 X* はコンパクトHausdorffであるから,仮定より整列可能な稠密部分集合 D⊂X* を持つ.しかし X* の稠密な部分集合は定義から X か X* しかない.従って X は整列可能であり,Loeb空間であることが分かる.

(1 ⇒ 3) 明らか.

(3 ⇒ 1) X*の基底は { {x} | x∈X } を含むので X は整列可能である.

(1 ⇒ 4) 明らか.

(4 ⇒ 1) 離散位相空間Xが弱Loeb空間であることを示せばよい.コンパクト化X*=X∪{∞}はコンパクトHausdorffであるから,∞∈X*は整列可能な基本近傍系 N を持つ.N の整列順序を一つ定めておく.X*の定義から各 U∈N に対して |X\U| < ∞ である.そこで F∈AX0 に対して f(F) := F\min{ U∈N | ¬F⊂U } と定めれば 0 < |F| < ∞ かつ f(F)⊂F である.

命題 Loeb Hausdorff空間の直積はLoeb空間
⇒ 非空整列可能集合の族 {X_λ}_{λ∈Λ} は選択関数を持つ.

証明 {X_λ}_{λ∈Λ}を非空整列可能集合の族とする.どの Xλ にも含まれない元 ∞ を取り Yλ := Xλ∪{∞} に離散位相を入れるとこれはLoeb Hausdorff空間である.よって直積空間 Y := Πλ∈ΛYλ はLoeb空間である.そこで g: AX0→X を選択関数とし, πλ: X→Xλ を標準射影とする. Y の定義から明らかに,各 λ∈Λ に対して πλ-1(Xλ)∈AX0 である.よって f: Λ→∪_{λ∈Λ}X_λ を f(λ) := πλ(g(πλ-1(Xλ))) で定めれば f が選択関数である.

命題 Loeb Hausdorff空間の直積はLoeb空間
{X_λ}_{λ∈Λ}を整列可能集合の族で Λ が整列可能ならば∪_{λ∈Λ}X_λも整列可能.
特に,選択公理 ⇔「Loeb Hausdorff空間の直積はLoeb空間,かつ任意の集合は整列可能集合の整列和で書ける.」

証明 {X_λ}_{λ∈Λ}を整列可能集合の族とする.前命題と同じ記号を使うことにして, A⊂Xλ を取ると πλ-1(A)∈AX0 である.よって P(Xλ)\{∅} の選択関数 fλ が fλ(A) := πλ(g(πλ-1(A))) により定まる.この選択関数 fλ により Xλ の整列順序 ≦λ が定義される.これにより ∪_{λ∈Λ}X_λ の整列順序が定義できる.故に ∪_{λ∈Λ}X_λ は整列可能である.

参考文献

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