群や環の直積
選択公理とは「非空集合の族に対して≠∅」であった.これをXλを別のもの,例えば群にした場合どうなるであろうか?
{ Gλ }λ∈Λ を群の族とする.このとき明らかに(選択公理によらず)Πλ∈ΛGλ≠∅である.何故ならば eλ を群 Gλ の単位元とすれば (eλ)∈Πλ∈ΛGλ となるからである. また,互いに異なるλ0, …, λn∈Λを任意に取り
gλ = 任意のg∈Gλi (λ=λiのとき)
gλ = eλ (λ≠λ0, …, λnのとき)
とすれば (gλ)∈Πλ∈ΛGλ である.即ち群の直積Πλ∈ΛGλ は(選択公理によらず)たくさんの元を持つことが分かる.
これは各群が単位元を一意に持つから言えることであるが,では成分に単位元が一切現れないような元は取れるであろうか?
定理
選択公理
⇔ 非自明群の族 { Gλ }λ∈Λ に対して,「任意のλ∈Λに対してgλ≠eλ」を満たす元 (gλ)λ∈Λ∈Πλ∈ΛGλ が存在する.
証明 (⇒)明らか.
(←)選択公理と同値なAMCを示せばよい.
AMC(=the Axiom of Multiple Choice)とは次の命題のこと.
非空集合の族に対し,有限集合の族で
任意のλ∈Λに対してとなるものが存在する.
を非空集合の族とする. F(Xλ) := { Y⊂Xλ | Yは有限集合 } は 対称差 Y△Z := (Y∪Z)\(Z∩Y) を積として群になる. 単位元は ∅ である. 仮定により(Yλ)λ∈Λ∈Πλ∈ΛF(Xλ)で 各λ∈Λについて Yλ≠∅ となるものが取れる. よってAMCが成立することが分かる.
定理
選択公理
⇔ 環の族{Rλ}λ∈Λで「任意のλ∈Λに対して|Rλ|≧3」を満たすものに対して,「任意のλ∈Λに対してxλ≠0λ, 1λ」を満たす元(xλ)λ∈Λ∈Πλ∈ΛRλが存在する.
証明(⇒)明らか.
(←)選択公理と同値な次の命題を示す.
集合族が「任意のλ∈Λに対し |Xλ|≧2 」を満たすとき, Λ上の関数 f が存在して任意のλ∈Λに対して ∅ ≠f(λ) ⊊ Xλかつ|f(λ)|<∞ となる.
を非空集合の族で|Xλ|≧2を満たすとする.Rλ := F(Xλ)∪{ Xλ\ Y | Y∈F(Xλ) } は対称差△を和,共通部分∩を積として環になる.零元は ∅ ,単位元は Xλ である.明らかに|Rλ|≧3だから,仮定により(Yλ)λ∈Λ∈Πλ∈ΛF(Xλ)で各λ∈ΛについてYλ≠∅, Xλとなるものが取れる. そこで
f(λ) := Yλ (Yλが有限集合のとき)
f(λ) := Xλ\Yλ (Yλが無限集合のとき)
とすればよい.
参考文献
- K. Keremedis, Some Equivalents of AC in Algebra, Algebra Universalis, 36 (1996), 564-572
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