閉集合と直積
定理1
選択公理
⇔を位相空間の族とし,集合族{Aλ}λ∈Λは任意のλ∈ΛについてAλ⊂ Xλを満たすとする.このとき
cl(Πλ∈ΛAλ)⊃Πλ∈Λcl(Aλ)
左辺の cl はでの閉包,右辺の cl は各Xλでの閉包である.
また,逆向きの包含関係
cl(Πλ∈ΛAλ)⊂Πλ∈Λcl(Aλ)
は(選択公理によらず)常に成り立つ.
証明 (⇒) x=(xλ)∈Πλ∈Λcl(Aλ)を取る. λ∈Λに対してxλ∈cl(Aλ)だから, xλの任意の開近傍U⊂ Xλに対しU∩ Aλ≠∅となる. xの任意の開近傍U⊂を取る. 族{Uλ}λ∈Λが,各UλはXλの開集合で Πλ∈ΛUλ⊂ Uとなるように取れる. このとき各λ∈ΛについてUλ∩ Aλ≠∅. 故に選択公理によりΠλ∈Λ(Uλ∩ Aλ)≠∅となる. 従ってU∩ A=Πλ∈Λ(Uλ∩ Aλ)≠∅である. よってx∈cl(Πλ∈ΛAλ).
(←) {Aλ}λ∈Λを空でない集合の族とする.¬∞∈∪λ∈ΛAλとなる∞を一つ用意し,Xλ := Aλ∪{∞}と置く.Xλに密着位相を入れる.明らかに≠∅.このとき
cl(Πλ∈ΛAλ)⊃Πλ∈Λcl(Aλ)=≠∅.
(Π Xλの中で考えて) cl(∅)=∅だから,Πλ∈ΛAλ≠∅でなければならない.
定理2 以下の命題は(ZF上)同値.
- 選択公理
- を位相空間の族とし,
{Aλ}λ∈Λは任意のλ∈Λについて
∅≠ Aλ⊂ Xλを満たすとする.このとき
Πλ∈ΛAλ⊂が閉集合 ⇒ 任意のλ∈Λ に対しAλ⊂ Xλが閉集合
- を位相空間の族とし,
{Aλ}λ∈Λは任意のλ∈Λについて
∅≠ Aλ⊂ Xλを満たすとする.このとき
Πλ∈ΛAλ⊂が閉集合 ⇒ あるλ∈Λ に対しAλ⊂ Xλが閉集合
証明 (1⇒2) 定理1によりΠλ∈ΛAλ =cl(Πλ∈ΛAλ)=Πλ∈Λcl(Aλ) である.よって選択公理によりAλ = cl(Aλ) である(集合に関する命題の定理7を参照).即ちAλ⊂ Xλは閉集合である.
(2⇒3) 明らか.
(3⇒1) 選択公理が成り立たないと仮定する.すると非空集合の族{Aλ}λ∈ΛでΠλ∈ΛAλ=∅となるものが存在する.¬∞∈∪λ∈ΛAλなる∞を一つ用意し,Xλ := Aλ∪{∞}と定める.各Xλには密着位相を入れる.∅=Πλ∈ΛAλはの閉集合だから, 仮定3より,あるλ∈Λが存在してAλ⊊ Xλが閉集合となる. Xλには密着位相が入っていたから,Aλ=∅でなければならず,矛盾する.
次の命題はZFで証明できる.
命題 を位相空間の族とし, 族{Aλ}λ∈Λは任意のλ∈Λについて ∅≠ Aλ⊂ Xλを満たすとする. またΠλ∈ΛAλ≠∅であるとする. このとき
Πλ∈ΛAλ⊂が閉集合 ⇒ 任意のλ∈Λ に対しAλ⊂ Xλが閉集合
証明 命題の仮定を満たすと{Aλ}λ∈Λを取る. Πλ∈ΛAλ≠∅だから,(aλ)∈Πλ∈ΛAλが取れる.
あるμ∈Λが存在してAμ⊂ Xμが閉集合でないと仮定する. p∈cl(Aμ)\ Aμが取れる. 写像f: Λ→を
f(μ) := p
λ≠μに対し f(λ) := aλ
と定める.明らかにf∈かつf∉Πλ∈ΛAλである.Πλ∈ΛAλ⊂は閉集合だから,fの開近傍U⊂でU∩Πλ∈ΛAλ=∅となるものが存在する.族{Uλ}λ∈Λを,各UλはXλの開集合で,Πλ∈ΛUλ⊂ Uとなるように取る.このとき
∅=U∩Πλ∈ΛAλ ⊃Πλ∈ΛUλ∩Πλ∈ΛAλ ⊃Πλ∈Λ(Uλ∩ Aλ)
である.p∈Uμかつp∈ cl(Aμ)だから, Uμ∩Aμ≠∅である.そこでq∈ Uμ∩ Aμを一つ取り,写像g: Λ→を
g(μ) := q
λ≠μに対し g(λ) := aλ
で定めれば,g∈Πλ∈Λ(Uλ∩ Aλ)=∅となり矛盾する.
参考文献
- Joao Paulo C. de Jesus and Samuel G. da Silva, Closed products of sets and the axiom of choice, Acta Mathematica Hungarica, Volume 133, Numbers 1-2, 128-132
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