2012年03月24日更新

Alexandroff-Urysohn-コンパクト

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定義 集合族Aに対し∩A := ∩B∈A B, ∪A := ∪B∈A B と書く.

定義 (X, O)を位相空間とする.

  1. x∈XがA⊂Xの完全集積点(complete accumulation point)
    ⇔ xの任意の開近傍Uに対し |A| = |A∩U|.
  2. XがAlexandroff-Urysohn-コンパクト
    ⇔ Xの無限部分集合は完全集積点を持つ.
  3. XがTychonoff-コンパクト ⇔ Xが閉区間[0, 1]の直積空間の閉部分空間と同相

定理1 以下の命題は(ZF上)同値.

  1. 選択公理
  2. コンパクト ⇒ Alexandroff-Urysohn-コンパクト
  3. コンパクト ⇔ Alexandroff-Urysohn-コンパクト
  4. Alexandroff-Urysohn-コンパクト空間の有限和は Alexandroff-Urysohn-コンパクト
  5. 開集合が有限個の位相空間はAlexandroff-Urysohn-コンパクト
  6. 密着位相空間の有限和はAlexandroff-Urysohn-コンパクト

証明 (1 ⇒ 2) (X, O)をコンパクトとし無限部分集合A⊂Xを取る.Aは完全集積点を持たないと仮定する.すると任意のx∈Xに対しある開近傍 U⊂X が存在して |A| > |A∩U| となる.よって開集合の族 U := { U∈O | |A|>|A∩U| } は開被覆である.XはコンパクトだからあるU1, …, UnUが存在して X = U1∪…∪Unと書ける.故に A = (A∩U1)∪…∪(A∩Un) となる.よって選択公理により|A∩U1|+…+|A∩Un| < |A|+…+|A| = |A| であるから|A|≦|A∩U1|+…+|A∩Un| < |A|となり矛盾.

選択公理⇔「|A1| < |A2|, |B1| < |B2| ⇒ |A1|+|B1| < |A2|+|B2|」である.また|A|+|A|=|A|の証明には選択公理を使う.

(2 ⇒ 5) 開集合が有限個しかない空間はコンパクトだから明らか.

(5 ⇒ 6) 密着位相空間の有限和は開集合が有限個なので明らか.

(6 ⇒ 1) 濃度の比較可能性を示す.A と B を互いに素な無限集合とする.A と B に密着位相をいれ,X := A∪B とする.仮定6より X はAlexandroff-Urysohn-コンパクトとなる.よって X は完全集積点 x∈X を持つ.x∈A としても一般性を失わない.このとき A は x の開近傍だから |X| = |X∩A| = |A|.故に|B|≦|X|=|A|となり,|A|と|B|は比較可能である.

(1 ⇒ 3) 既に(1 ⇒ 2)で示したように「コンパクト⇒Alexandroff-Urysohn-コンパクト」である.よって「Alexandroff-Urysohn-コンパクト⇒コンパクト」を示せばよい.

X をAlexandroff-Urysohn-コンパクトとする.閉集合からなる族 A が有限交差性を持つとする.∩A ≠ ∅ を示せばよい.基数κ := |A| に関する超限帰納法で示す.(選択公理により,Aが整列可能なことに注意する.)

まず,κが有限基数のときは明らかである.なのでκは無限基数であるとする.次の条件を満たすB⊂Fが存在する.

(a) Bは有限交差性を持つ.
(b) (B, ⊃)は整列順序集合である.
(c) ∩B = ∩A

φ: κ→A を全単射とする.α<κに対し,閉集合の族 { φ(β) | β<α }⊂A は有限交差性を持つ.| { φ(β) | β<α } | = |α| <κ だから帰納法の仮定よりFα := ∩β<αφ(β)は空でない.そこで B := { Fα | α<κ } と置く.明らかに(a)と(c)が成立する.F∈Bに対しf(F) := min{ α<κ | Fα=F } として f: B→κを定める.f は明らかに単射.Uαの定義よりα12<κに対し Fα1⊃Fα2 である.よって f: (B, ⊃)→(κ, ≦)は順序を保つことが分かる.そこで f により B をκの部分順序集合とみなせば,(B, supset)の整列性が分かる.

このとき∩B≠∅を示せばよい.|B|<κのときは帰納法の仮定より成立するので,|B|=κとする.

(B, ⊃)が整列順序だから,F∈Bに対し B(F) := { G∈B | F ⊋ G } ⊂ B は最小元(即ち⊂についての最大元)を持つ.それを S(F) と置く.明らかに F ⊋ S(F) である.そこで集合族 { F\S(F) }F∈B に選択公理を適用して選択関数 g: B→∪(F\S(F))⊂X を得る.Y := g(B) と置く.|Y| = |B| = κ は無限基数だから,Y は完全集積点 x∈X を持つ. 任意の F∈B に対し x∈cl(F) である.

x の開近傍 U⊂X に対し |g-1(Y∩U)| = |Y∩U| = |Y| = κ だから,g-1(Y∩U)⊂B は非有界部分集合である.故に F ⊋ G となる G∈g-1(Y∩U) が存在する.このとき g(G)∈Y∩U⊂U だから g(G)∈U∩(G\S(G))⊂U∩F,従って U∩F≠∅ となる.

Fは閉集合だから cl(F) = F, よって x∈∩F∈B cl(F) = ∩B である.

(3 ⇒ 4) 仮定3と「コンパクト空間の有限和がコンパクト」であることから明らか.

(4} ⇒ 6) 密着位相空間はAlexandroff-Urysohn-コンパクトなので明らか.

定理2 以下の命題は(ZF上)同値.

  1. 選択公理
  2. Alexandroff-Urysohn-コンパクト空間の直積はAlexandroff-Urysohn-コンパクト
  3. Alexandroff-Urysohn-コンパクト空間の有限直積はAlexandroff-Urysohn-コンパクト
  4. 開集合が有限個な空間の直積はAlexandroff-Urysohn-コンパクト
  5. 有限離散位相の直積はAlexandroff-Urysohn-コンパクト
  6. 2 := {0, 1} の直積はAlexandroff-Urysohn-コンパクト

    ここでは2には離散位相を入れる.

証明 (1 ⇒ 2) 定理1の3(コンパクト⇔Alexandroff-Urysohn-コンパクト)とTychonoffの定理により明らか.

(2 ⇒ 3) 明らか.

(3 ⇒ 1) 濃度の比較可能性を示す.その為にAとBを任意の無限集合とし,X := A∪B に密着位相を入れる.Xと2は共にAlexandroff-Urysohn-コンパクトだから,仮定3によりX×2もAlexandroff-Urysohn-コンパクトとなる.よって部分集合 C := (A×{0})∪(B×{1}) ⊂ X×2 は完全集積点(x, y)を持つ.y=0としても一般性を失わない.すると X×{0} は(x, 0)の開近傍だから |C| = |C∩(X×{0})| となる.従って |A| = |A×{0}| = |C∩(X×{0})| = |C| = |A∪B| ≧ |B|.

(1 ⇒ 4) 定理1の5より,開集合が有限個の空間はAlexandroff-Urysohn-コンパクトである. よって既に同値性が示された条件2により4が分かる.

4⇒5 と 5⇒6 は明らか.

(6 ⇒ 1) 濃度の比較可能性を示す.その為にAとBを任意の無限集合とし,AにもBにも含まれない元 ∞∉A∪B を用意する.X := A∪B∪{∞} と置き,直積2Xを考える.仮定6より 2X はAlexandroff-Urysohn-コンパクトである.部分集合 Y⊂X の特性関数を χY∈2X と表す.即ち

x ∉ Y のとき χY(x) = 0
x∈Y のとき χY(x) = 1

である.C := { χ{a} | a∈A }, D := { χ{a, ∞} | a∈B } と書く.C∪D⊂2Xは無限集合であるから,完全集積点 f∈2X を持つ.

(i) f(∞)=0のとき
U := { g∈2X | g(∞)=0 }⊂2X は f の開近傍だから |C∪D| = |(C∪D)∩U| が成り立つ.故に |B| = |D| ≦ |C∪D| = |(C∪D)∩U| = |C| = |A|.

(ii) f(∞)=1のとき
U := { g∈2X | g(∞)=1 }⊂2X は f の開近傍だから |C∪D| = |(C∪D)∩U| が成り立つ.故に |A| = |C| ≦ |C∪D| = |(C∪D)∩U| = |D| = |B|.

(i)(ii)より |A| と |B| は比較可能である.

定理3 以下の命題は(ZF上)同値.

  1. 選択公理
  2. Tychonoff-コンパクト空間はAlexandroff-Urysohn-コンパクト
  3. [0, 1]の直積はAlexandroff-Urysohn-コンパクト

証明 (1 ⇒ 2) XをTychonoff-コンパクト空間とする.X は [0, 1]Λ の閉部分空間とみなしてよい.選択公理と同値なTychonoffの定理により[0, 1]Λ はコンパクトとなる.よってコンパクト空間の閉部分空間であるXもコンパクトである.定理1の2 (コンパクト⇒Alexandroff-Urysohn-コンパクト) によりXはAlexandroff-Urysohn-コンパクトである.

(2 ⇒ 3) [0, 1]ΛはTychonoff-コンパクトだから明らか.

(3 ⇒ 1) 濃度の比較可能性を示す.その為にAとBを任意の無限集合とし,AにもBにも含まれない元 ∞ ∉ A∪B を用意する.X := A∪B∪{∞} と置き,直積[0, 1]Xを考える.仮定3より [0, 1]X はAlexandroff-Urysohn-コンパクトである.部分集合 Y⊂X の特性関数をχY∈[0, 1]Xと表す.即ち

x ∉ Y のとき χY(x) = 0
x∈Y のとき χY(x) = 1

である.C := { χ{a} | a∈A }, D := { χ{a, ∞} | a∈B } と書く.C∪D⊂[0, 1]X は無限集合であるから,完全集積点 f∈[0, 1]X を持つ.

(i) f(∞)≦1/2 のとき
U := { g∈[0, 1]X | 0≦g(∞)<2/3 }⊂[0, 1]X は f の開近傍だから|C∪D| = |(C∪D)∩U| が成り立つ.故に |B| = |D| ≦ |C∪D| = |(C∪D)∩U| = |C| = |A|.

(ii) f(∞)>1/2 のとき
U := { g∈[0, 1]X | 1/2<g(∞)≦1 }⊂[0, 1]X は f の開近傍だから |C∪D| = |(C∪D)∩U| が成り立つ.故に |A| = |C| ≦ |C∪D| = |(C∪D)∩U| = |D| = |B|.

(i)(ii)より |A| と |B| は比較可能である.

コメント

(名無し) | 2020年12月19日 06:01

Alexandroff-Urysohnコンパクト⇔Heine-Borelコンパクトと選択公理とが同値という噂を耳にしました.

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